本年12月の日銀短観において、銀行の業況判断DIは現状・先行きともプラスに転換した。この1年間をみても、銀行は他業種に比べて安定して推移している。先行きを含めて、コロナ禍前の水準を上回っているのは、銀行等の金融業以外では通信業のみである。
また、金融機関の貸出態度判断DIは、政府の資金繰り支援策等により、高水準でプラスを維持している。銀行等の積極的な貸出スタンスや経済活動を再開する動きを背景に、資金繰り判断DIも、一時マイナスとなった中小企業・製造業を含めて、直近はプラスに転じている。
リーマン・ショック時は、金融市場の混乱等を受けて銀行の業況判断が他業種にやや先行して大きく悪化し、貸出態度が厳格化した結果、企業の資金繰りが逼迫した。これに対して、今回のコロナ危機下では、安定した金融システムが実体経済を支えている様子が窺える。今後の回復局面においても、円滑な成長資金の供給等で回復を後押しすることが期待される。
懸念材料は、新型コロナの感染拡大が続くなか、2020年度の経常利益率計画が一段と下振れ、設備投資計画も慎重化している点である。これらの動きはリーマン・ショック後とも類似している。今後、企業の経営環境が一段と悪化した場合、銀行が貸出態度を厳格化して、企業の資金繰りに悪影響を及ぼす恐れもある。金融と実体経済が負の連鎖に陥ることがないよう、引き続き注視が必要である。
日銀短観からみるコロナ危機下の金融システムの安定性(PDF:264KB)
