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コロナ禍で再考するESG/SDGs経営の在り方

2020年12月14日 大森充


1.コロナ禍で再考するESG/SDGs経営の在り方
 コロナ禍以前から企業における経営環境は、VUCA(※1)時代と呼ばれるほど不透明・不確実性が増している。コロナ禍はその傾向をさらに強くし、目まぐるしく変わる外部環境下においてゴーイングコンサーン(継続的な企業成長)が企業経営に求められているのが実態である。
 また、コロナ禍は多くの経営者の価値観を変えた。「コロナ禍は利益至上を見直す契機」、「人が幸せを感じる働きやすい会社を実現する」等、日本の名だたる経営者は口をそろえて、「人の幸せ」を中心とした企業経営の在り方を模索し始めている。
 係る状況下、企業経営者は「人の幸せ」を目的(パーパス)に据え、経済価値だけでなく社会価値を発揮する企業経営を推進していく機運が生まれつつあるが、どうすべきか。

2.洗練化すべきは価値創造ストーリー
 ますます不確実性が高まる外部環境下、本質的な問いは、自身が経営する企業は「どうあるべきか、どういう会社になるべきか」にあり、各企業におけるゴーイングコンサーン(継続的な企業成長)を模索し続けることにある。例えば、企業にとっての継続的成長を「売り上げ」という指標で見るのであれば客数または客単価を伸ばすための成長戦略が必要であり、「利益」という指標で見るのであれば売り上げ一定でもコスト削減による利益創出を目指すといった戦略が必要である。しかし、コロナ禍以降のニューノーマル時代においては、従来の経済を中心とした考え方だけでは成長を描くことは難しい。
 仮に「人の幸せ」を企業経営の中心に据えたときはどうか。「人の幸せ」を目的にした企業経営における継続的な成長とは何かを定義する必要があるが、それは売り上げや利益といった財務目標だけで計測できるものではなく、非財務目標の設定も必要となる。ここでいう「人の幸せ」は従業員だけでなく、企業を取り巻く全てのステークホルダーを対象にした幸せであるとすると、推進していく事業が環境や社会に対して悪影響を及ぼすことは許容できない。
 そこでフレームワークとして有用なのが「価値創造ストーリー」である。価値創造ストーリーというと、IIRCが統合報告で定めたオクトパスモデルを頭に思い浮かべる方が多いと思うが、これはとても分かりにくい。そこで、日本総研なりに解釈し直して整理したのが図1である。

3.コロナ禍を踏まえた現状認識(アクナレッジ)から実現したい社会像まで
 2050年や2100年までに構造的に変わらないと言われているグローバルメガトレンド、そこに顕在化している社会課題としてのSDGs、昨今のコロナ禍等を踏まえた現状認識の整理から始める(図1の①)。
 次に、自分たちの会社が実現したい社会像を描く。SDGsは「持続可能な社会」を到達地点とした現状とのギャップを課題としてまとめたものであるが、企業経営において目指す社会像が「持続可能な社会」では抽象度が高い。自分たちが望む「持続可能な社会」はどういった社会像かを描くことは結果として社会課題を自分事と捉える良いきっかけとなるため、ぜひ試してみてほしい(図1の②)。
 加えて、将来実現されるであろう「持続可能な社会」において「この会社があってよかったね」「この会社があったから持続可能な社会が実現されたよね」と思われる企業にはどうすればよいか、それが企業の目指す到達地点である。経済性だけでなく、社会性の高みも併せて目標化することが重要である(図1の③)。
 そして、その到達地点に向けて「何を解決すべきか」についての課題を「マテリアリティ」としてまとめる。専門用語としての「マテリアリティ」という言葉がなじまないようであれば、経済も社会も両立し、実現したい社会において自身の会社の存在意義を発揮できる到達地点を達成するために解決すべき事項、すなわち、経営課題と捉えていただくのが良い。そこまで整理ができれば、後は打ち手となる施策、KPIとしての目標(財務・非財務目標)を計画化し、目下3年であれば中期経営計画として、10年単位であればビジョンとして取りまとめることを推奨したい(図1の④)。
 最後に、それらKPI(財務・非財務)を達成できた時に、アウトカムとしてSDGsに代表される社会課題に対してどこまで好影響が及ぶかを最後に整理する。価値創造ストーリーの初めの段階において社会課題認識を整理しているため、紐づけ自体は容易であると考えられるが、地球の劣化や社会課題顕在化が著しい昨今において、推進されている事業が本当に社会課題解決に直結しているかという観点で最終的にチェックされると良い(図1の⑤)。
 コロナ禍で目下のキャッシュフローが毀損し、「戦略や計画どころではない」と思われる方もおられるかと思うが、価値創造ストーリーに基づく戦略・計画策定の考え方が今後の企業経営の一助になれば幸いである。



(※1) Volatility(変動性・不安定さ)、Uncertainty(不確実性・不確定さ)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性・不明確さ)という4つのキーワードの頭文字から取った言葉。

※記事は執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。
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