中国では、11 月から社債のデフォルトが急増している。こうした動きは、「暗黙の政府保証」の是正という構造改革の前進と捉え評価できる一方、2021 年の景気押し下げ要因として警戒的に見ておく必要がある。
現時点では、連鎖破綻といったシステミックリスクにつながるような状態が生じているわけではない。これまでも中国社債市場でのデフォルトは趨勢的に増加してきたが、今回は、国有企業のデフォルトが多いという点に注意が必要である。
国有企業の社債デフォルト増加の背景として、中国経済がコロナ禍からの回復軌道に乗ったことで、中国政府が国有企業の資金繰り支援を縮小したことが挙げられる。
この狙いは、いわゆる「暗黙の政府保証」の是正とみられる。長い間、利払いに窮した国有企業に対して政府が全面的に支援してきたため、国有企業には「暗黙の政府保証」があった。この結果、国有企業は返済能力に見合わないほど債務を拡大し、過剰債務状態に陥った。
足許で国有企業の社債デフォルトが増えているのは、中国政府が社債市場における「暗黙の政府保証」を是正し、国有企業改革に乗り出したことを示す動きと解釈できる。
中国における企業収益の改善が著しいなか、現時点では、大規模なシステミックリスクに至る可能性は低いものの、国有企業のバランスシート調整や再編と通じて、景気への一定のマイナス影響は避けられない。
中国の社債デフォルト急増をどうみるか(PDF:525KB)
