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2008年07月11日

本社だけでなく支社の影響も大きい地域経済・地方財政 ~雇用や生産への貢献を活かし、増税手段への利用は慎重に~

要旨
1. 資本金規模別に企業の分布をみると、100億円以上では東京が58.2%を占めるのに対して1千万円未満では18.1%であり、東京の構成比が突出するのは大企業の中でも特に規模が大きい企業の場合である。東京ほどではないが、大企業では大阪の全国構成比も10.5%と高い。時系列変化では、複数事業所企業の本社は愛知で、支社は愛知、埼玉、千葉、兵庫で構成比が上昇している。
2. 他の都道府県への支社展開をみると、北海道や神奈川など1道7県の企業では東京、また京都、兵庫など4県の企業では大阪への支社配置が最も多い。東京、大阪以外で支社配置先第1位となっている県は福岡、愛知、宮城などである。一方、地元企業以外の支社ではどこに本社がある企業の存在が目立つかをみると、大阪、愛知など36道府県では東京の企業、東京、京都など6都府県では大阪の企業が設置した支社が最も多い。九州では福岡の企業が存在感を増している。
3. 支店経済という言い方が必ずしも積極的評価として使われないように、支社の存在は過小評価されがちであるが、複数の事業所を持つ企業をみると、1986年には全体の36.5%を占めていた本社従業者の構成比が2006年には27.8%に低下し、代わって本社所在地以外の都道府県の支社に勤務する従業者が38.1%を占めるようになった。都道府県別にみると、37府県で、地元企業の本社、または地元企業が同一府県内に設けた支社の従業者より、他の都道府県に本社がある企業によって設けられた支社の従業者の方が多い。
4. 宮城、茨城、栃木、埼玉、神奈川、三重、滋賀の7県は、他の都道府県に本社のある企業が設けた支社に勤務する従業者が、県内の全就業者数を基準とした相対比で20%以上となっており、県外の企業による支社の設置が県内の労働需要に貢献している。
5. 全就業者数との相対比でみて、複数事業所企業の本社従業者が高い比率を示すのは東京である。東京に比べると低いが、大阪、愛知など12府県も、全都道府県の中では本社従業者の比率が高い方である。東京都は、都内に存在する本社が都内、都外の支社に提供した本社サービスの生産額を約29.3兆円と推計している。大阪府は東京都のおおよそ3、4割程度とみられる。
6. 企業の本社、支社は、生産活動や雇用を通じて地域の経済活動に寄与しているほか、国や地方自治体にとって重要な納税者となっている。企業が納める主要な税には、国税として法人税、地方税 として法人事業税、法人住民税(均等割と法人税割)、固定資産税、都市計画税、事業所税などがあり、なかでも法人税、地方法人二税(法人事業税、法人住民税)が代表的である。また、税収額としては固定資産税も大きい。
7. 法人税は、本社所在地で納税することになっているため、納税地の分布は、企業数の構成比では約1%ながら法人税額の約7割を納めている大企業の本社の分布に近く、東京、大阪、愛知で約3分の2を占めている。ただし、国税であるため、納税地にそのまま税収が回るわけではない。
8. 法人事業税は一部の都道府県に偏在していると指摘されることが多いが、法人税の納税地の偏り に比べれば、上位集中度は緩やかである。これは、事業所が複数の都道府県に存在する場合には課税標準が分割され、分割後の課税標準に応じて税額が決められるためである。このため、本社が存在しなくても支社が存在すれば、地方自治体にとって税収につながる。分割が行われた後の法人事業税がなお「偏在」しているか否かについては議論が分かれるが、財政力格差に早期に対応することが喫緊の政治課題になっていることから、税体系の抜本的な改革が行われるまでの暫定措置として、法人事業税(地方税)の一部が地方法人特別税(国税)に分離され、地方法人特別税の税収を地方法人特別譲与税として都道府県に譲与する制度が設けられた。
9. 法人住民税所得割も、事業所が複数の都道府県に存在する場合には課税標準が分割されるため、法人事業税と同程度の上位集中度を示すが、法人税の納税地に比べれば偏りは緩やかである。法人住民税均等割は、利益を計上しているか欠損かにかかわらず、事業所が存在すれば課税の対象となるため、上位集中度はさらに弱まり、事業所の分布に近くなる。
10. 固定資産税は、課税客体が本社、支社の所在地の土地や、そこに建てられたり設置されたりしている家屋や償却資産であるため、事業所の分布に似た形となり、上位集中度は弱い。都市計画税、事業所税は、課税方法の性格上、比較的大きな都市が多く存在する都府県で大きくなる傾向があるが、支社の存在が税額に影響するため、本社所在地での一括納付となる法人税に比べれば上位集中度は緩やかである。
11. 企業の本社、支社が数多く立地している地域や、新たに企業の進出を促すことに力を入れている地域にとって、企業は生産や雇用の増加をもたらすだけでなく、税収の増加によって地方財政の改善にも貢献を期待される存在である。企業の本社、支社が多く存在する地域は、企業関連の地方税が大きくなるだけでなく、従業者の個人住民税や、従業者の住居に対する固定資産税なども押し上げられる。
12. このため、多くの地方自治体で、税の軽減などによって企業進出を促そうとする試みが行われている。しかし、その一方で、企業の本社、支社が数多く存在していることに着目して税の増収をはかろうとしている場合もある。地方自治体の課税自主権尊重については、地方分権を推進するため、地方の歳出規模と地方税収との乖離の縮小、住民の受益と負担の対応関係の明確化などの観点から地方税源を充実させる必要があるという考えから進められてきたが、実際には住民の受益と負担の対応関係の明確化というより、住民(個人)に負担感を生じさせることを避けて、選挙権を持たない企業に課税される傾向がある。企業の拠点を巡る地方自治体の政策は、雇用や生産における地域経済への寄与拡大とそれに伴う自然体での税収の増加をはかる方向で進められることが望ましく、企業に偏った増税策の採用は控えるべきだろう。
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