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JRIレビュー Vol.1,No.85

日本経済見通し

2020年12月24日 村瀬拓人


日本経済は、新型コロナ流行直後の歴史的な落ち込みから持ち直しつつあるものの、経済活動の水準は、依然として年初を大きく下回る厳しい状況が続いている。

輸出についてみると、モノの動きである貿易取引は新型コロナ流行後の落ち込みをほぼ取り戻しており、急回復の局面はほぼ一巡した。足許では、新型コロナの感染再拡大を受け再び経済活動の規制に踏み切る国も出てきており、財輸出の増加ペースは、次第に鈍化する見通しである。また、インバウンド需要も、訪日観光客への入国規制などを背景に、当面、ゼロの状態が続くと見込まれる。

一方、内需に目を移すと、企業の設備投資は、慎重な姿勢が一部でみられるものの、デジタル化関連の投資需要や経営体質の改善が支えとなり、リーマンショック時ほどの落ち込みはみられていない。足許の収益環境は改善傾向にあることから、設備投資も、先行き持ち直しに転じる見込みである。

個人消費は、新型コロナの感染者数の動向に左右される形で自粛ムードが残るとみられるほか、今後は雇用・所得環境の悪化も重石になる。失業率は、2021年前半にかけて4%近くまで上昇すると予想される。賞与を中心に賃金への下押し圧力も強いことから、個人消費は、新型コロナ流行以前の水準を下回る状況が長期化する見通しである。

以上を踏まえると、2020年度は4~6月期の大幅な落ち込みの影響で、▲5.1%と過去最大のマイナス成長となる見通しである。2021年度は+3.5%、2022年度は+1.7%とプラス成長に転じるものの、景気回復ペースが緩やかなため、GDPが新型コロナ流行前のピーク水準を回復するのは、2023年度にずれ込むだろう。

全体的に厳しさが残るなか、新型コロナによる景気の落ち込みからの回復は一様とはならず、業種・企業規模・販売戦略などの違いにより回復格差が残るとみられる。今後は、成長力の強化だけでなく、回復格差にも配慮した取り組みが不可欠である。政府は、新型コロナの影響が大きい業種、分野に的を絞り、「事業の再構築」と「労働移動の円滑化」を支援する政策を検討する必要がある。
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