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リサーチ・フォーカス No.2020-029

米国の銀商分離規制を巡る最近の動き ~わが国でのイコール・フッティング確保に向けた示唆~

2020年12月03日 佐倉勲


米国では、いわゆる「銀商分離規制」のもとで、銀行の議決権株式の25%以上を直接・間接的に保有する企業は、銀行持株会社として業務範囲が規制されており、一般の事業会社は原則として銀行を保有できない。また、州法銀行の一形態である産業融資会社(ILC)は、例外的に事業会社による保有が可能であるが、銀商分離規制の抜け穴になるとして問題視され、長らく認可されてこなかった。

こうしたなか、銀商分離規制の緩和と捉えられる動きが出てきた。提携銀行の預金・貸出を仲介するフィンテック企業のVaro Money が、自前での銀行サービスの提供を目的に銀行免許を申請し、本年7月、認可されたほか、同業のJiko は、提携銀行の買収が認可された。一方、電子決済業者のSquare と教育ローン業者のNelNet は、本年3月、新規のILC 免許の申請が認可された。しかし、実際には、新たに認可された銀行は親会社が主に金融事業を営むケースに限定され、かつ、追加的な資本要件が課されており、依然として米当局は銀商分離規制の緩和に慎重である。

米当局のスタンスを如実に表しているのが、楽天によるILC 免許取得を巡る動きである。同社は、2019 年7 月より、米国において銀行業務を営むため、ILC 免許を申請しているが、電子商取引をはじめとする様々な事業を営む楽天に対する免許付与のハードルは高く、二度にわたり申請取り下げを余儀なくされた。この背景として、①一般事業と銀行業のリスクの遮断、②顧客の個人情報保護、③他行との競争条件、の3点において問題があると指摘されている。

上記に加え、米国では、漸進的に緩和されているとはいえ、銀行やその持株会社に対する業務範囲規制が存在し、銀商双方向で参入が制限されている。一方、欧州では、事業会社による銀行保有、銀行による一般事業に対する制限は基本的に存在せず、双方向で参入を容認している。翻ってわが国は、事業会社による銀行保有が認められ、多様な事業会社が銀行業に参入する一方、銀行の業務範囲が規制される「一方通行」の銀商分離規制となっている。銀商間の公正な競争環境を実現して、銀行の経営資源を最大限に活用できるようにすべきである。

米国の銀商分離規制を巡る最近の動き ~わが国でのイコール・フッティング確保に向けた示唆~(PDF:990KB)
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