欧州では、ユーロ圏・英国ともに、7~9月期の実質GDPは新型コロナ流行前の9割を超える水準まで回復。輸出などの回復が遅れる一方、個人消費が急速に持ち直したことが主因。
10月入り後は、新型コロナの感染再拡大を受け、各国は再び活動制限を強化。雇用・所得環境の一段の悪化は避けられず、サービス関連を中心に、個人消費は再び落ち込む公算が大。一方、企業活動への影響は小幅にとどまる見込み。海外景気の持ち直しなどに支えられ、製造業生産は底堅く推移する見通し。
ユーロ圏の財政政策は、コロナ禍を受けて大きく拡大。2021年以降は拡大ペースが縮小へ。復興基金については、利用条件に一部の国が反対。稼働が遅れれば域内景気回復の足かせに。
金融政策については、ECBが今春に導入したPEPPに支えられ、ソブリンリスクが顕在化する可能性は小。また、2022年末にかけて需給ギャップが残るなか、低インフレが長期化。金融政策の正常化は展望できず。
政治面では、バイデン米大統領の誕生により、欧州企業の関税リスクの低下と環境関連分野での需要増が期待可能。Brexitについては、新協定の締結に成功した場合でも、2021年入り後の英国景気を下押し。
以上を踏まえ、景気の先行きを展望すると、ユーロ圏・英国ともに、10~12月期の実質GDPは再びマイナス成長へ。2021年入り後は、感染が収束するにつれ活動制限が緩和され、景気は回復コースに戻るとみられ、W字型の回復に。もっとも、雇用・所得環境の悪化などから、経済活動が以前の水準に回復するのは2022年後半となる見通し。加えて、英国では移行期間の終了に伴う混乱も景気の重石に。
リスクシナリオとしては、まず2020年末に英・EU関係が合意なき移行期間の終了を迎える展開。そうした場合、双方の経済に負の影響大。また、2021年以降の政治イベントにより、欧州全体をまとめ上げるリーダーが不在となる可能性。加えて、イタリアで反EU政権が誕生すれば、同国の債務問題が再燃する恐れ。
【欧州経済見通し】欧州景気はW字型回復へ ~新型コロナ前水準の回復は2022年後半に~(PDF:1,209KB)
