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2008年06月17日

排出権取引の概要

<本稿の目的>
1. 地球温暖化対策への取り組みが人類共通の課題となるなかで、排出権取引が対策の一つの柱となりつつある。ところが、「排出権」はあくまでも人為的に作られたものであるため、一般には実感し難い。また、制度に大きく依存していることから細かな取り決めが多数存在する。さらに、複数の排出権取引制度が並存するなか、ときにはそれらが区別されない状態で議論が進むため、専門的知識がなければ議論を追うのが難しい。
こうしたことから、取引の当事者や専門家以外の間では、排出権取引という言葉やその大まかな意味はわかっていても、具体的な中身については十分理解されていない恐れがある。
2. そこで、ここでは排出権取引の特徴や種類、地球温暖化対策との関係、注目点、新たな動きなどを簡潔に整理し、排出権取引への理解の一助としたい。
<要約>
1. 排出権取引は、温室効果ガスの排出削減を低コストで効率的に進めるための仕掛けであり、「キャップ&トレード」と「ベースライン&クレジット」という二つの基本方式がある。
2. 京都議定書には、いわゆる京都メカニズムに基づく国際排出権取引制度が定められている。そのもとで実施されたプロジェクトはすでに3,500件近くに上る(2008年4月末時点)。わが国もこの制度に組み込まれており、電力、鉄鋼、商社などが排出権の取得に動いている。
3. 一方、わが国にはEU-ETS(EU排出権取引制度)のような強制参加型のキャップ&トレードは導入されていない。しかし、京都議定書の削減目標の達成が厳しいことや、他の先進諸国でキャップ&トレードが広がりつつあることを背景に、導入の検討が始まっている。とりわけ、欧州に続いてアメリカでも導入に向けたモメンタムが高まっており、さらに欧米でキャップ&トレードの共通ルールづくりに向けた動きが始動している状況下で、わが国がいつまでもキャップ&トレードの蚊帳の外にとどまるのは得策ではないとの見方が広がっている。
4. わが国が強制参加型のキャップ&トレードの導入を決めた場合に最大の争点になると予想されるのは、企業への排出枠の割り当て方法である。割り当てには「オークション」、「グランドファーザリング」、「ベンチマーク」の三つの方式があるものの、どれも一長一短があり、すべての企業が納得できる形で割り当てを行うのはきわめて難しい。
5. 近年の排出権取引はEU-ETSが牽引している。EU-ETSは2005年の制度開始以来、取引量、取引金額ともに6倍に膨張し、その結果、EU-ETSでの取引は2007年に世界の排出権取引量の7割、金額ベースでは8割近くを占めるまでになった。排出権取引は相対が主流であるものの、取引の拡大に伴って取引所取引も増加している。
6. 地球温暖化や排出削減への関心が高まるなか、排出権にかかわるさまざまな新しい商品が登場している。例えば、排出権信託商品は排出権の取得のハードルを大幅に引き下げ、これまで排出権の購入が難しかった小口需要の掘り起こしに寄与すると予想される。また、カーボン・オフセット商品は一般市民が手軽に排出削減に貢献できるとあって急速に注目を集めている。一方、運用商品としてリターンを得つつ地球温暖化に貢献したいというニーズに応えるために、排出権連動債券や排出権指数に連動する投資信託が公募で販売されるようになっている。
7. 京都議定書の第1約束期間後(2013年以降)の枠組みづくりの帰趨次第で京都メカニズムに悪影響が及ぶ可能性は排除できないものの、京都メカニズムの枠組みの外でも排出権取引が拡大する公算が大きいことを踏まえると、排出権取引そのものは今後一層拡大・発展していくと判断される。
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