米国では、新型コロナウイルスの感染が急拡大した本年3月以降、家計に対する給付金支給や企業の手元資金確保の動きなどにより、銀行預金残高が急増。一方、貸出残高は、個人向け貸出の減少や企業による貸出から社債への借換等により、5月をピークに漸減傾向。結果として、預貸率は大きく低下(図表1)。
米大手商業銀行4行(JPMorgan Chase、Bank of America、Citi、Wells Fargo)では、昨年末から本年9月末にかけて、資産残高が合算で約1兆ドル増加する一方、貸出金をはじめとするリスクアセットはほぼ横ばいで推移(図表2)。
総資産残高の増加の内訳をみれば、預金に加えて、米国債や不動産担保証券(エージェンシーMBS)等を投資対象とする満期保有目的債券の持ち高が増加(図表3、4)。自己資本比率の引き上げといった規制対応の観点に加え、今後の金利上昇の可能性も踏まえ、会計上時価が反映されない満期保有目的債券を拡大させている状況。
預貸ギャップの拡大が続けば、米銀においても余剰資金運用の必要性が増大。米国債やMBS債市場において更なる金利低下圧力になるほか、米銀が収益確保のため従来よりもリスクの高い投資に動くことも想定され、今後の動向に注視が必要。
注目される米国商業銀行のバランスシート拡大(PDF:251KB)
