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容量市場結果公表 ~初回約定結果から読み解く容量市場が与えるインパクト~

2020年10月21日 早矢仕廉太郎


1.初めての約定価格は上限価格に張り付く結果に
 2020年9月14日、初めて開催された容量市場の約定結果が公表された。約定価格は予め設定された上限価格である14,137円/kWに張り付く結果となった。これはkWhに換算すると3.86円/kWh(小売負担の容量拠出金単価10,143円/kW、負荷率30%)であり、容量拠出金の負担を強いられる小売事業者にとっては極めて厳しい結果と言える。特に、容量市場の参加対象外となっているFIT電源、容量価値の小さい再エネ電源、市場等から電源調達を行っている新電力は、容量拠出金の負担を軽減する手段を今のところ持ち合わせていないため、事業性に大きく影響を受けることになる。本稿では、今回の高値約定の要因を探るとともに、改めて容量市場が事業者に与えるインパクトを明らかにする。



2.ルールの穴を突いた発電事業者の入札行動が高値約定の要因に
 高値約定となった主な要因は、①経過措置電源に対する逆数入札の許容、②同一価格の約定処理、③維持管理コストの計算方法の3点と筆者は考える。①について、小売事業者の負担を軽減する観点から、2010年度末までに竣工した電源は、経過措置として契約額から一定割合が控除される仕組みになっており、今回の2024年度オークションにおいては契約額の42%が控除されることになっている。一方、経過措置対象となる電源は、それを維持するために必要な金額を確保する機会を与えるため、本来の入札価格にその割引分の逆数を乗じて入札すること(逆数入札)も認めている。例えば、容量価値として8,000円/kWを希望する経過措置電源がある場合、仮に8,000円/kWで約定したとしても経過措置電源に支払われる金額は42%が控除された4,600円/kW程度にしかならない。しかし、控除されることを見越して、8,000÷(1-0.42)=14,000円/kW付近で入札し、仮に14,000円/kWで約定した場合には、当初の希望通り8,000円/kWの容量対価を得ることができる。これが今回上限価格付近の入札が900万kW以上あったからくりである。
 また、今回約定点に同一価格で入札した電源が複数あった場合、全ての電源が落札する仕組みとなっていた(②同一価格での約定処理)。そのため、上限価格で入札した電源全てを落札電源として扱ったことにより、想定よりも300万kW多く約定する結果となり、それだけ容量拠出金の負担が大きくなった。さらに電力・ガス取引監視等委員会(以下、監視委)の報告によれば、ただちに問題となるものではないものの、維持管理コストの計算方法についても疑義があるものが見られた(③維持管理コストの計算方法)。



3.経産省は早速入札ルールの見直しに着手
 こうした入札ルールの穴を突いた発電事業者の入札行動が今回の高値約定を引き起こしたと考えて間違いないであろう。今回の結果を受けて、経済産業省は入札ルールの見直しに着手するとしており、今回挙げた3つの点は、入札価格を引き下げる方向に何らかのチューニングが施される見込みである。



4.小売事業者だけでなく発電事業者もリスク回避に向けた行動を
 今回の約定結果を受けて、多くの新電力は容量市場が事業に与えるインパクトの大きさに驚いたに違いない。今後、入札価格を引き下げる方向でのルール見直しが行われることになるわけであるが、前回筆者がコラムで言及した、価格ボラティリティの問題は引き続き残っている。今回は、リスクヘッジの重要性を小売事業者が認識することになったが、同じ懸念が発電事業者にも妥当することに留意し、お互いリスク回避に向けた行動に取り組んでいくことが重要である。

※記事は執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。
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