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2008年01月18日

サブプライム問題で変化するグローバル金融の構図

要 約
1.  「サブプライム問題」を整理すれば3つのステージに分けられる。2006年末から07年春にかけての第1ステージでは住宅金融専門会社が破綻し、昨年夏場の第2ステージでは、大手証券会社傘下のヘッジファンドの破綻を契機にABCP(資産担保CP)市場の機能不全、さらには短期金融市場における流動性危機が発生。秋口以降の第3ステージでは欧米大手金融機関の決算において巨額のサブプライム関連損失が次々と表面化し、流動性危機から金融システム危機の様相を呈している。
2.  サブプライム問題は、アメリカのマクロ経済に対して、(1)建設・金融など関連産業の雇用減少、(2)貸出基準厳格化、競売増加など需要減少・供給増加による住宅市場の調整長期化、(3)住宅価格下落による逆資産効果とキャッシュアウト効果の剥落による個人消費の減少、等の経路を通じて下押し圧力となる。今後を展望しても、デフォルト率のさらなる上昇が見込まれ、今年後半まで事態は沈静化しないと見られる。
3.  一方、金融資本市場においては、(1)金融機関の貸出基準のさらなる厳格化、(2)クレジット市場の混乱、(3)ABCP市場の収縮と短期金融市場における流動性不足などの影響が生じている。今後は、(1)損失拡大により経営難に陥る金融機関の増加、(2)モノライン金融保証専門会社など他の金融業態の経営悪化、(3)LBOファイナンスの減少によるM&A市場の縮小が懸念される。
4.  金融機関の損失拡大の可能性については、様々な議論・試算がある。本レポートでは、サブプライム問題の最悪シナリオとして、二つの試算を行った。最悪シナリオ(1)では、証券化商品の損失と証券化されていない住宅ローンに発生する損失を合わせて、総額1,420億ドルの追加損失が発生すると試算される。対象をサブプライムだけでなく、Alt-A/Alt-B、シンセティックCDOに拡大した最悪シナリオ(2)では、グローバルなサブプライム関連の損失は合計で4,636億ドルに達すると試算される。
5.  サブプライム問題では会計上の問題が事態を深刻にした面がある。2007年11月に導入されたアメリカの新会計基準(FAS157)では、CDOなどの評価見直しを迫られ、これが金融機関等の大幅な損失計上につながった。また、リスクが完全に遮断されていないSIVsを連結対象外として許容していたことは、会計上の不備であることが明らかになった。
6.  今回のサブプライム問題の根因は、グローバルインバランスが生み出した過剰流動性にある。この過剰流動性の源となっているのが、オイルダラーやアジア各国の中央銀行、ヘッジファンド、プライベート・エクイティーファンドの四つニューパワーブローカーである。なかでも、オイルマネーやアジア各国の中央銀行はSWF(ソブリン・ウェルス・ファンド)を通じて、自己資本が損傷した欧米金融機関へ出資しグローバル金融の構図の中で存在感を急速に高めている。
7.  今回のサブプライム問題で、米国に向かっていたグローバルな資金の流れに変化が生じる可能性がある。行き場を失ったマネーは、新興国市場や、商品市場にも流れ、世界的な資産インフレを招来するほか、市場のボラティリティを高める可能性がある。また、SWFが政治的動機から動く場合もあることから、将来金融分野での国際協調は難しくなる可能性がある。今後、これらのリスクを視野に入れつつ、国際金融市場において資金移転が効率的に行われるような市場環境の整備(銀行規制・監督・国際会計 基準のルール)を再検討することが必要であろう。2008年はまさにサブプライム問題によりグローバル金融の構図が変化に向う転換点となる1年になりそうである。
   
  目 的

 本レポートでは、サブプライム問題が引き起こしたマクロ経済および金融資本市場への影響を試算するとともに、今後変化が予想されるグローバル金融の構図について考察する。
 なお、参考のために、サブプライム問題の基本的な情報を末尾に掲載した。
  目 次
 
  1. サブプライム・ショックの波及メカニズム
  2. サブプライム問題によるマクロ経済への影響
  3. サブプライム問題による金融資本市場への影響
  4. 今後の金融機関の損失拡大の見通し
  5. 会計上の問題点への対応と限界
  6. 世界のマネーフローの構図が変化
  7. 存在感を増す新しい資金仲介者の登場
  8. SWFの対応とその影響
  9. むすび
    * 参考資料(1~4)
※本資料は金融記者クラブ、財務省記者クラブ、内閣府記者クラブにて配布しております。
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