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JRIレビュー Vol.12,No.84

With╱Afterコロナにおけるスタートアップの展望-「ラクダ」「シマウマ」モデルの台頭と地域分散の可能性

2020年10月07日 岩崎薫里


スタートアップへの投資は、新型コロナウイルス感染症の拡大により世界的に選別色が強まっている。そのなかにあって、新型コロナが誘発する新しいニーズや価値観、生活様式に対応することができるスタートアップにとっては飛躍の好機となる。

スタートアップはもともと成長志向が強いが、ユニコーン(推定評価額10億ドル以上の未上場企業)の仲間入りを目指すあまり急成長至上主義に陥るところが続出した。その弊害が顕在化するもとで、事業環境に制約がある状況において持続的成長を志向する「ラクダ」型や、収益と社会的利益を同時に追求する「シマウマ」型のモデルが注目されるようになっている。With╱Afterコロナにおいては、ユニコーンへの評価が厳格化するとともに、スタートアップが目指す方向性として、従来のユニコーンにラクダやシマウマが加わり、多様化すると予想される。

わが国に目を転じると、これまではスタートアップのブームとバスト(破裂)が繰り返され、バストの後は次のブームが到来するまでスタートアップは一律に厳しい事業環境の下に置かれた。ところが、2014年頃から始まった第4次ブームを通じて、スタートアップに対する社会的な認知が進み、ベンチャーキャピタルなどの周辺人材・組織も拡充し、ブーム・バスト・サイクルから決別して新たな段階に入ったと判断される。このため、新型コロナでスタートアップの事業環境が悪化しているものの、過去にみられたような一律の極端な落ち込みは回避されると見込まれる。一方、わが国ではユニコーンの数を増やすことが政策目標に掲げられているが、事業環境の悪化に加えて持続的成長を重視する最近の潮流を踏まえると、ラクダやシマウマを増やすほうが、より有効な政策といえるのではなかろうか。

わが国のスタートアップの一つの特徴として、東京一極集中が指摘できる。それを打破し、自らの地域にもスタートアップが自律的・継続的に設立されるスタートアップ・エコシステムを構築しようと、全国各地の自治体がスタートアップ支援策に乗り出している。地域の事業環境が東京ほど整備されていない点、および地域には東京以上に社会課題が多い点を踏まえると、地域はとりわけラクダやシマウマと親和性が高いと判断される。

一方、新型コロナを契機にわが国でリモートワークが浸透するとともに、居住の場や働き方の選択肢の拡大、リモートでのコミュニケーションの普及などが予想される。こうした環境変化は地域のスタートアップ・エコシステムづくりの追い風になると見込まれる。地域はこれまで、スタートアップ起業家および周辺人材・組織の不足に悩まされてきたが、居住地としての東京の魅力の低下や、東京の人材・組織のリモートでの活用の拡大などを通じて、それらの問題が軽減されるためである。もっとも、With/Afterコロナでは、スタートアップを地域に囲い込むのが難しくなるなど、スタートアップと地域のかかわりにも変化が生じるとみておくべきであろう。このため自治体としても、スタートアップの自由な出入りを前提とする、オープンなスタートアップ・エコシステムの構築を目指すことが重要となろう。
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