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ラストマイル自動運転を実証から実装へ

2020年09月29日 逸見拓弘


 2020年3月、日本総研が運営する「まちなか自動移動サービス事業構想コンソーシアム」では、神戸市北区筑紫が丘において自動運転車両を用いた路車間通信の実証実験を実施した。目的は、自動走行ルートの死角を監視する道路側センサーの情報を活用しながら、自動運転車両が果たして交差点を安全かつ円滑に通過することができるかの検証だった。具体的には、自動走行ルートの交差点付近の電柱あるいは信号柱に、車両から見て死角となる向きにレーザーセンサーを設置して、自動走行ルートの死角に存在する車両や歩行者の情報を自動運転車両に送信する。情報を受信した自動運転車両がその情報を参考にしながら、交差点を安全かつ円滑に通過できるかを検証するというものだった(詳しくは、日本総研のニュースリリース参照のこと(※1))。この実証では、実際に、道路側センサーの有効性を確認することができた。もちろん、実証が成功したとなれば次は実装に進むということになるのだが、その段階では、2つのことが問題になる。

 1つは、どの交差点に道路側センサーを設置すべきかという問題だ。道路側センサーとして有効なLiDARと呼ばれる機器は安価とは言えないため、自動走行ルート上のすべての交差点にLiDARを設置するのは現実的ではない。ならば、自動走行ルートの各地点のリスクを評価し、死角からの飛び出しリスクが高いと評価された交差点にのみセンサーを設置して安全性を確保していく考え方が現実的だ。自動走行ルートをブロックごとに分割し、各ブロックにおける自動走行リスクを洗い出して自動走行リスクを評価する指標が策定することができれば、この問題は大きく解決に近づく。

 もう1つは、道路側センサーを設置する際の地域関係者との合意形成をどのように進めていくべきかという問題だ。自動走行ルートの安全性評価の結果、道路にセンサーを設置する必要が生じた場合、様々な地域の関係者にも然るべき説明をしてセンサー設置の承諾を得る必要がある。しかし、今のところ、関係者への説明順序と説明内容について定型化された資料が存在せず、各現場はそれぞれ独自の判断で説明を進めているため、時間がかかり効率も悪い。各事業者の経験知を結集させ、「地域関係者への説明順序と説明内容」を定型化できれば、各現場が地域関係者への説明を円滑に進めることが可能となり、実装を進めやすくなる。

 前者の問題については、2020年7月、国交省自動車局が「ラストマイル自動運転車両システムのガイドライン」を公表した。ガイドラインでは、ラストマイル自動運転システム開発者が運行設計領域(以下、ODD)と技術的要件として考慮すべき項目について言及し、国としての指針を示した。一方で、ガイドラインで言及されている項目を満たす具体的な「ODD×技術的要件」の検討は、民間事業者の検討領域となる。例えば、上で述べたような道路をブロック分割して安全性確保をしていくような検討や、ガイドライン記載の“合理的に予見される防止可能な事故“とはどのような事例を指すのかの検討は民間事業者に委ねられている。しかし、民間事業者にしてみればこのような検討を各自で推進していくのは効率が悪い。民間事業者同士が知恵を持ち寄り、協調できるものは協調して検討を推進していく方が、実装への道のりは近づくはずだ。

 ラストマイル自動運転を一日も早く安全、安心かつ日常のものとするために、日本総研は、自動走行の早期実装を推進する民間主体を結集させる動きとして、上記2つの問題の解決策を検討する研究会の立ち上げを構想している。ラストマイル自動運転に携わる関係者と協調しながら検討を推進していきたいと考えているので、ご関心のある方はぜひご連絡をいただきたい。
 
 
(※1)株式会社日本総合研究所ほか、『自動運転車両による「住宅地における路車間通信」の実証実験について~道路側センサーが自動運転車両に交差点情報を提供、「右折」等の円滑化と安全確保を検証~』2020/3/16


※記事は執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。
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