11 月の米大統領選に向けて策定された民主党の政策綱領等をみれば、金融関連では、①金融規制改革、②金融政策への影響、③環境・気候変動への対応、の3点が注目される。
金融規制改革については、リテール金融機関からの投資銀行業務の分離、ボルカー・ルールを含めたドッド・フランク法の強化・執行等の規制強化が掲げられている。詳細は不明ながら、規制強化の度合い次第では、大手米銀のビジネスモデルのみならず、金融システムにも影響が及ぶ可能性がある。
金融政策について、バイデン氏は中央銀行の独立性を重視するとみられ、FRBは金融政策の正常化を進めやすくなる可能性がある。また、政策綱領では、FRB のマンデート(使命)に「人種の平等(racial equity )」を追加すべきと明記されている。金融政策以外にも、金融包摂の観点から、FRB を通じた銀行口座やリアルタイム決済システムの提供等を奨励している。個人が直接中央銀行の口座を保有する制度は、中銀デジタル通貨(CBDC)の議論に繋がる可能性がある。
環境問題・気候変動については、気候変動リスクの開示等を要請している。国際的にも気候変動や環境問題と金融システムの安定性を結び付けて議論する機運が高まっており、米国の政策動向に注目が集まる。
これらの政策を実現するためには、バイデン候補の勝利に加え、民主党が議会選挙で勝利する必要がある。現状、金融規制強化の機運は高まっていないほか、FRB のマンデート変更や気候変動リスクの監督等は導入に時間を要するとの見方もある。こうしたなか、米国金融業界は、①大統領選動向を受けた民主党内のリベラル派の影響力拡大、②議会選挙の動向、③ウォール街批判の急先鋒のエリザベス・ウォーレン上院議員の去就を懸念している。
米国の政策動向は、わが国における金融規制やCBDC の議論等に大きな影響を及ぼす可能性がある。また、米国の気候変動に係る政策転換は、国際的なESG/SDGs の推進力となる。わが国としては、国際的な機運に先んじて、積極的に議論に関与するとともに、官民が連携して推進していく必要がある。
米民主党・バイデン大統領候補が示した金融関連の政策 ― 選挙結果次第で変化する金融システム、金融ビジネスへの影響 ―(PDF:1,186KB)
