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リサーチ・レポート No.2020-021

望ましいフリーランスの普及に向けてー国際比較を踏まえた政策対応

2020年08月31日 山田久


1990年代以降デジタル革命が進展し、2020年に入ってからは新型コロナウイルス感染症の世界的流行で、ギグ・エコノミー(ウェブを通じた単発の仕事の受発注が行われる経済)の拡大が見込まれるなか、「雇われない働き方」であるフリーランスの増加が予想されている。その新たな可能性に期待する声がある一方、コロナ禍での経済収縮により、フリーランスの不安定性が改めて明らかになった。

「雇われない働き方」は形式的には自営業主となるが、その実態は多様である。農業主や商店主、「士業」といった伝統的自営業でない、ホワイトカラー系の「フリーランス」が増えている。その内訳は様々で、本稿では、「使用従属性」の低いフリーランスを「独立契約者(インディペンデント・コントラクター)、高いフリーランスを「雇用的自営」と呼ぶことにする。

「フリーランス」の数は、90年代半ば以降増加傾向にあり、2015年には169万人となっている。この背景には、①サービス産業化の進展、②デジタル経済の拡大、③労働力の属性の多様化、④制度的な要因(労働規制の強化・社会保険料負担の増加)が指摘できる。わが国でのフリーランスは、総じて雇用者よりも労働条件が劣り、「独立契約者」は少なく、「雇用的自営」が多数を占める状況とみられる。

主要先進国での自営業の推移をみると、その増減の傾向は各国様々であるものの、わが国での減少傾向が目立つ。背景にはサービス産業での自営業の動向が影響しており、自営業に占めるサービス産業の割合がわが国では低下傾向にある一方、米国では横ばい、欧州では総じて上昇傾向にある。

自営業比率がどう決まるかを、OECDのデータを用いてクロス・セクションで分析してみた。主な発見事実としては、①労働者属性の多様性が高まれば自営業(フリーランス)が増える、②正規従業員の保護程度が高いほど自営業比率が高くなる、③企業の社会保険負担が重いほど自営業比率が高まる、といった傾向が観測された。

欧米では、3つのパターンにより、フリーランスの質の悪化への対応を行ってきた。第1は、雇用・自営間の就労条件差を少なくして低スキルの雇用的自営の拡大に一定の歯止めをかけるパターン(米国)、第2は、フリーランスの増加を促進するが、収入源のうちの一つとして位置づけるパターン(英国)、そして第3は、フリーランスの普及を図る一方、社会保障面を充実させ、「雇用の空洞化」を回避するパターンである(ドイツ)。わが国ではこれらを参考に、a)雇用と自営の就労条件のイコール・フッティングを進めつつ、b)生き方の選択肢を増やすための働き方の選択肢の一つにしていくことが重要であろう。

わが国でフリーランスが量・質の両面で欧米諸国に劣る基本的背景には、わが国企業の組織編成・人材活用の在り方が影響している。人材タイプを職務の限定性の有・無、労働者のスキルの高・低で分類すれば、望ましいフリーランスである「独立契約者」は、「職務限定・高スキル」タイプと代替可能なものと分類される。わが国ではこのタイプが少ないため、就業者のスキルの面でも、企業の人材活用の面でも、望ましいフリーランスが育ちにくい環境にある。わが国で「職務限定・高スキル」タイプを増やすには、「育成」「配置」の面で、一企業内で完結しない、社会横断的な仕組みを構築する必要がある。もっとも、そうしたタイプの人材が必要なのは、わが国雇用社会の再構築にとって必要だからであり、それが結果として望ましいフリーランスの普及につながる、という全体観の中で考えることが重要である。

「望ましいフリーランス」がわが国で普及するための政策対応としては、①労働法上の対応(「偽装自営」を排除し、新たな分類を設けてどういった面を雇用者同様に保護するかを再考すること)、②競争政策上の対応(優越的地位濫用防止の観点での独占禁止法の運用)、③人材育成インフラの整備(財政面での支援の仕組みや実効性あるリカレント教)育の仕組みの整備)、④労働移動を円滑化する仕組みの整備、⑤社会保障制度の対応(ドイツを参考にしたプラットフォーム型フリーランス向けの社会保険制度の創出)、⑥副業の適正な形での推進(英国のようなシニア・フリーランスの奨励)、が指摘できる。

・望ましいフリーランスの普及に向けてー国際比較を踏まえた政策対応(PDF:1451KB)
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