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【次世代交通】
地域公共交通とレジリエンス(感染症・大雨洪水等)

2020年07月28日 泰平苑子


 はじめに新型コロナウイルス感染症の影響を受けられた皆さま、九州を中心とした7月の記録的大雨で被害に遭われた皆さまに心よりお見舞い申し上げます。また医療関係や災害対応に関わる皆さまへ深く感謝いたします。

 国土交通省が報告した新型コロナウイルス感染症による公共交通を担う企業への影響を見ると、輸送人員、運送収入、車両稼働率の大幅な減少、資金繰り悪化による持続化給付金や雇用調整給付金の活用が顕著に見られる。事業撤退も余儀なくされる事例も出ており、深刻な状況だ。足元、関東圏では感染者数が再び増加する傾向も見られ、第二波も想定すると、感染症の終息や輸送人数の回復には時間がかかることは間違いない。

 令和2年7月豪雨では、九州を中心に河川の氾濫と浸水被害、土砂崩れが発生した。2017年の九州北部豪雨、2018年の西日本豪雨、2019年の台風15号や台風19号や千葉県を中心とした記録的短時間豪雨など、毎年水害が発生している。

 今回のコロナ禍では、内閣官房が官民情報を活用したポータルサイトを整備した。また、都道府県でも感染症対策と最新動向のポータルサイトを公開するところが相次いだ。Code for Japanが作成した東京都の新型コロナウイルス感染症対策の公式サイトがオープンソースで公開され、それが大阪府・神奈川県・福岡県など多くの自治体で展開されたのだ。

 感染症や大雨洪水等が引き続き発生することを想定すると、地域公共交通のレジリエンス(防災・減災・復旧など)を高めることが重要となる。レジリエンスでまず重要なのは、状況把握だ。刻々と状況が変わる感染症や大雨洪水等では、状況把握の負担を減らし、早期に対応を意思決定できることが望ましい。これまで交通事業者や利用者は個別に情報収集してきたが、地域公共交通の視点で一定のエリア全体で収集された情報に基づく地域ポータルサイトを設けてはどうか。気象情報、海や河川の情報、道路や線路の情報、人流情報や混雑情報、感染情報、被害情報、交通事業者向け情報、利用者向け運行情報などを地域ごとに整理したポータルサイトだ。定期的な情報更新、外部情報の活用、視覚化(マップやグラフ)により、交通事業者の情報収集の手間が減らせる。早期の状況把握は、車両の高台避難、TEC-FORCE(地方整備局による緊急災害派遣隊)との連携など施策実施にもつながるだろう。

 現在、2020年1月に報告された国土交通省の交通政策審議会の「中間とりまとめ(地域公共交通部会)」をもとに、持続可能な地域旅客運送サービスの提供確保に向けた、新たな制度的枠組みの検討が進む。2020年6月に報告された国土交通省の「令和2年版国土交通白書」では、災害対策について国民目線で分かりやすい抜本的・総合的な対策や、分野横断的に平時から非常時、復旧・復興時まで、行政・企業・住民が連携し対応することで、「防災・減災が主流となる社会」の実現を目指すと示した。今後、地方公共団体や関係者が連携・協働する法定協議会の充実(地域公共交通会議の拡充)が図られることになるが、そこで地域公共交通のレジリエンスや状況把握の手段確立の具体策が議論されることを強く望みたい。

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※記事は執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。
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