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リサーチ・フォーカス No.2020-012

反中感情が高まるインドのジレンマ~容易ではない中国経済依存からの脱却~

2020年07月14日 熊谷章太郎


2020 年5月以降、国境問題をきっかけにインドの対中感情が悪化している。その影響は中国製品の不買運動や貿易・投資規制の厳格化など経済面にも生じており、今後インド経済の脱中国化が進むとの見方が広がりつつある。

しかし、中国の供給能力の大きさや生産コストの低さを勘案すると、インドの中国への輸入依存からの脱却は容易ではない。また、EV(電気自動車)、再生可能エネルギー、次世代通信などの分野における中国との協力は、今後のインド経済の発展にとって欠かせないものである。そのため、インド政府は、自国の経済成長を阻害しかねない中国との決別には慎重と見込まれる。

一方、中国政府も最終的にはインドとの関係悪化を回避すると予想される。米中対立の長期化が見込まれるなか、輸出・投資の拡大を通じたインドの需要取り込みは、国内市場の成熟化に伴う成長鈍化が見込まれる中国にとっても重要である。そのため、インドと中国が報復合戦を通じて経済対立をエスカレートさせていくリスクは限定的と判断される。ただし、安全保障面の対立が続くことやインド経済が本格台頭する局面になれば印中間でも覇権争いの様相が強まることを踏まえると、中長期的に印中関係は「政冷経熱」と「政冷経冷」の間で揺らぎ続けると見込まれる。

こうした状況下、在印日系企業は、ASEANも含む巨視的観点での中間財の輸入調達先や販売先の多様化などを通じて、印中関係の変化に柔軟に対応していくことが求められる。


反中感情が高まるインドのジレンマ~容易ではない中国経済依存からの脱却~(PDF:929KB)
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