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リサーチ・フォーカス No.2020-011

関西観光業の復活に向けて ― 関西在住者、遠方在住者、インバウンドの3段階での取り込みを ―

2020年07月13日 若林厚仁


昨年までの関西インバウンド消費は他地域と比較しても活況を呈しており、関西経済をけん引してきた。一方、京都や大阪への集中、東アジアからの訪日客への依存などの偏りが生じ、持続的発展を損ないかねない問題も大きくなっていた。

足許の観光業はコロナ禍で極めて厳しい状況にあるが、人口減少下にある関西経済にとって、インバウンド消費は関西の消費縮小トレンドを食い止める重要な位置付けであることに変わりはない。もっとも、コロナ禍を経て、関西の観光戦略は見直しの時期を迎えている。インバウンド消費がコロナ前の水準に回復するには年単位の時間を要する可能性が高いため、日本人観光客の増加を図る必要がある。その際、まず関西在住の近場旅行客、次に関西域外からの遠方旅行客、最後にインバウンドの3段階での回復を目指すべきである。

関西在住者は近場への旅行には行くものの、多くが日帰りである。これを旅行単価の高い宿泊旅行に誘導することが観光業復活の第一歩と言える。関西在住者限定のキャンペーンなどは即効性が期待できるものの、持続性を持たせるためには、早朝・夜間のイベント実施など宿泊意欲を高める仕掛け作りが重要である。

関西域外からの遠方旅行客は、京都・大阪・奈良などの定番観光地に集中する傾向がある。国内旅行への関心が高まっている今こそ、関西郊外の観光地にも足を運んでもらい、関西観光の裾野を広げる施策が求められる。

インバウンドについては、定番観光地以外への誘導や欧米旅行客の呼び込みなど、受け入れる地域・訪れる観光客の国籍の偏りを是正すること、関西広域で連携して観光地としての魅力を高めるなど受入体制を整備することが重要である。

関西では、2021 年のワールドマスターズゲームズ、2025 年の大阪・関西万博といった国際的イベントも控えている。そこで本格的な関西観光の盛り上がりを迎えるためにも、当面は感染拡大防止に向けた適切な対応を取りつつ、関西観光業の復活に向けて中長期のビジョンに基づいた前向きな取り組みが期待される。


関西観光業の復活に向けて ― 関西在住者、遠方在住者、インバウンドの3段階での取り込みを ―(PDF:857KB)
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