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リサーチ・レポート No.2020-013

「報復性消費」は中国経済を救うか―2020 年中のV 字回復は困難―

2020年07月10日 三浦有史


中国では3 月以降、新型コロナウイルスの新規感染者が減少する収束局面に移行し、国全体としては感染拡大防止に成功しているといえる。政府は、①個人と地域のリスクをネットワーク上で管理する情報管理体制の構築、②自治会に相当する「社区」の相互監視機能を感染拡大防止に活用する「封閉式管理」の導入、③大規模な隔離やロックダウンを躊躇わない大胆な感染拡大防止策の発動によって、規制の緩和と「第2 波」の抑止を両立させる出口戦略を採っている。国内では企業の稼働率が上昇するのに伴い国際通貨基金(IMF)の予測を上回る成長を遂げるという見方が出始めている。

固定資産投資は鮮明なV 字回復がみられ、年後半の中国経済を支えるエンジンになると考えられる。一方、個人消費は回復ペースが緩慢である。感染収束を受け、家計が消費を増やす「報復性消費」に対する期待が高まっているものの、雇用・所得環境の悪化により、家計は消費を増やすわけにはいかないと考えている。回復したかにみえた輸出も先進国と新興国・開発途上国の両方で景気後退が進むことから、再び減少に転じる可能性が高い。中国がIMF の予測を上回る成長を実現するのは容易ではなく、是が非でも早期回復を図ろうとするのであれば投資に依存するしかない。

家計は雇用・所得環境の悪化を受け、貯蓄志向を高めている。個人消費の回復が弱いことはスマートフォンの位置情報や地下鉄の乗降客数といった移動データからもうかがえ、「9 割消費」が新常態になりつつある。中国は感染拡大を防止する規制が多く残されているため、移動やそれに伴う消費もなかなか回復しない。それでも規制緩和に踏み切らないのは、規制緩和によって再び爆発的感染拡大を招来するわけにはいかないと考えているためである。

いつ、どこで新たな感染が発生するかが分からないという不安は、どのような消費を選択するかという消費行動にも影響を与えている。オンライン消費は今後も順調に伸びると見込まれるものの、実店舗での消費や娯楽関連の消費は大幅に抑制されるため、個人消費の本格的な回復は当面期待できないと考えるのが妥当である。


「報復性消費」は中国経済を救うか―2020 年中のV 字回復は困難―(PDF:1,667KB)
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