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新型コロナウイルス影響下における企業従業員の健康管理(在宅勤務者への対応)

2020年07月06日 望月弘樹


■在宅勤務を経験してみて
 新型コロナウイルスによる外出自粛は、多くのオフィスワーカーの在宅勤務が加速される結果を生み出した。
 筆者においても当初「会社に出社しなくてよい」、「自宅で自由に仕事ができる」と思っていたが、この長期の在宅勤務に慣れるまで(今でも)非常に困難を伴った。
 現在は解除されたが、新型コロナウイルスによる外出自粛により学校は一斉休校。家庭が職場となった筆者に、家庭が学校となった子どもは頻繁に話しかけてくるため、仕事への集中力が高まらない。結果として勤務時間も増加した。
 また、掃除、昼食・夕食、入浴、宅配便への対応等の家庭の生活リズムが仕事に入り込み仕事のペースが乱される。
 日々の業務においても社内外とのコミュニケーションがメール・オンライン会議等に限定され、出社・移動の時間も必要ないため隙間なくオンラインミーティングが設定され、資料作成等の時間が削られた。結果として長時間労働となる。また頻繁にやってくるビジネスチャットへの対応等によりPCにかじり付く時間が増加した。また自宅での作業による肩こり・腰痛等もひどくなった。在宅勤務は想像とは全く異なり大変であると感じた。

■在宅勤務における仕事と生活の両立
 これまで出社することで、仕事のON/OFFが物理的に区切られていたが、在宅勤務では、自宅において仕事と生活の両立を求められることになった。これは個々従業員の自宅環境・家族構成等によりその困難さは異なるであろう。
 家族同居であれば、筆者のように家庭と仕事のリズムを確立するのが難しく集中力が損なわれ、単身世帯では、自身以外の生活が在宅勤務環境に入ってこないため、仕事と生活の区分が曖昧になる等、いずれにしても物理的に同じ環境において仕事と生活を両立することは一定程度の困難を伴う。
 新型コロナウイルスに端を発した在宅勤務の推進は、ウィズコロナ下においても継続的に進められるであろう。実際、日立製作所では、緊急事態宣言解除後も在宅勤務中心にする方針を打ち出している。NTTにおいても5割以上の在宅推進を掲げている。
 在宅勤務を推進する中で、企業側は在宅勤務を行う従業員の仕事と生活の両立に向け、従業員の自宅環境・家族構成等に応じた多様な環境整備、自宅で働く側の視点に立った労務管理・健康管理等の取り組みを行うことが必要となる。

■在宅勤務者の健康管理
 昨今、多くの企業が健康経営の取り組みを進めているが、今後、企業は在宅勤務者の健康管理、健康保持・増進にも積極的に取り組む必要がある。
 すでに在宅勤務者に対するオンライン産業医面談や、運動不足解消のためのオンライントレーニング動画の配信、健康情報の提供等を行う企業等も現れてきているが、在宅勤務では管理職が従業員の心身の健康状態を把握する機会(例えば、職場でのコミュニケーションや声かけ等)も失われる結果、早期発見・早期介入等を行うタイミングを逸することも予見される。そのような場合に、例えば業務時間内に仕事以外のオンラインコミュニケーションを図る時間を定期的に設定する、メンタルヘルス対策のため睡眠測定デバイスを活用するなどの取り組みも必要になってくるであろう。
 また、過重労働防止の観点からは、PCログ等による労務時間管理に留まらず、例えば家族事情等で日中時間帯に働けない場合は、一定のルールの下で深夜労働を許可する、等の個別事情に応じた柔軟な働き方への対応も求められるであろう。
 また、連絡を取り合わず一人で業務に集中する時間を社内ルールとして決める、早朝深夜時間帯の社内ビジネスチャット禁止等のルールを決めて共有することも、過重労働防止のみならずメンタルヘルスの観点からも重要であろう。

■ウィズコロナを前提とした健康経営を
 新型コロナウイルスが収束するのか、またウィズコロナとして新たな生活・働き方のスタイルが定着していくのか、今後が予見できないからこそウィズコロナを念頭とした従業員の健康管理・労務管理の対策が企業経営上重要である。
 今後、働き方が変わるという前提の下、企業従業員の健康を保ち、多様な働き方を認め、在宅であっても健康的で働きやすい仕組み・取り組みを進めることで、在宅勤務にも対応した新しい健康経営の仕組みを早期に確立することが望まれる。

※記事は執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。
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