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ビューポイント No.2020-013

コロナ危機下、2020年労働政策の焦点-フリーランス安全網・労働時間規制・最低賃金制度

2020年07月03日 山田久


長期化の様相を呈している新型コロナウイルスの流行は、様々な面で雇用・労働の在り方に大きな影響を及ぼしている。フリーランスという働き方の安全網の不十分さが改めて浮き彫りになったほか、在宅勤務が一気に普及したことで、子育てを含めた生活と仕事との円滑な両立を図るために労働時間のルールをどう見直すのかという問題点が改めて浮上している。最低賃金との関わりでは、「エッセンシャル・ワーカー」と呼ばれる現場労働者の処遇引き上げの必要性が認識されたといえよう。

2008年にリーマンショックが起こった当時、派遣労働者の不安定さが象徴的に取り上げられたが、今回のコロナショックでは、主に自営業主の立場で業務委託を受けて働く「フリーランス」の困窮が問題視されている。そもそもフリーランスに対する安全網(セーフティーネット)が十分ではないという構造問題が露呈した形である。もっとも、一口にフリーランスと言っても極めて多様であり、十把一絡げにルールを決めることは困難といってよい。実態把握が十分に進んでいないなか、客観データの収集が急がれる一方、現実は待ってくれない。走りながら考えていくしかなく、できるところから着手すべきである。具体的には、①プラットフォーム型フリーランス社会保険制度の創設、②「第2の失業保険」の拡充・整備、に着手することを提案したい。

今回、コロナ禍対応で図らずも、テレワークが一気に普及し、男性の家事・育児参画の可能性が広がった。その一方で、実際にテレワークのもとで仕事と子育て・生活の両立を実現していくための様々な課題も明らかになった。なかでも重要なのは、「労働者本人が仕事時間と生活時間を主体的に管理できる能力の習得とそのための環境整備」である。この意味で、労働時間規制の在り方の再検討がテーマに浮上しているといえる。これは、一義的には企業の人材マネジメントに関わる部分であるが、政策的にも、①「高度プロフェッショナル制度」の普及・見直し、②裁量労働制の適正運用、③人材育成インフラの整備・強化、の3点に取り組むべきである。

7月中の地域別最低賃金の「目安」の決定が目指されているが、今年は労使の考え方が真っ向から対立している。百年に一度のパンデミックという非常事態であり、足許、最低賃金近辺の賃金で働く労働者の割合が急速に高まっていることも考慮すれば、従来のペースで引き上げる場合、相当程度の悪影響が雇用に及ばざるを得ない。一方、最前線で働く「エッセンシャル・ワーカー」の存在が注目されるなか、彼らの処遇改善の観点からも最低賃金引き上げの重要性は変わらない。加えて考慮すべきは、コロナ禍の経済・雇用への影響は、経済の再開状況や産業構造によって地域ごとに異なる点である。

結局、可能な限り高めの引き上げの期待を表明しつつ、今回は具体的な目安は示さず、地方最低賃金審議会で労使の話し合いに委ねる、というのが一つの解ではないか。ただし、引き上げモメンタムが消滅しないように、第2次補正予算で計上された「地方創生臨時交付金」等を活用し、地域の中小企業の生産性向上支援策や賃金助成を通じて、最低賃金の引き上げを支援することを、政府として表明すべきある。さらに当局に求められるのは、労使の力関係や政治的な思惑に左右されず、合理的な賃金決定がなされる仕組みづくりのため、有識者による検討委員会を立ち上げ、新しい最低賃金決定システムの構築に着手することであろう。

コロナ危機下、2020年労働政策の焦点-フリーランス安全網・労働時間規制・最低賃金制度(PDF:658KB)
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