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withコロナ時代への適応を促す廃棄物処理の事業視点

2020年06月05日 副島功寛


コロナ感染による廃棄物処理施設の稼働停止リスクの顕在化
 世界を窮地に陥れたコロナ感染の拡大が、わが国の廃棄物処理事業にも様々な影響を引き起こしている。
 まず、運転員の感染に伴う施設の稼働停止リスクが顕在化した。焼却施設内には密となる空間が存在し、搬入ごみからの感染懸念もある。一度感染が発生した場合には、当該施設で濃厚接触のあった関係者を自宅待機とすることが必要になるが、感染懸念が全国に広がったことにより、他施設からの運転員派遣が難しくなっており、感染防止の徹底が必須となっている。ごみ処理施設には、環境学習機能として施設見学もあるが、来訪者による集団感染リスク懸念から、当該機能の活用にも制約が出ている状況である。
 また建設段階では、工事現場での3密による感染懸念や海外からの調達停止懸念等から工事遅延が想定され、供用開始予定の変更が必要となる可能性も指摘されている。
 コロナ感染は、廃棄物処理の整備・運営事業に対し、幅広くリスクをもたらしている。

廃棄物処理事業に生じる方針転換
 この未曾有の危機により、廃棄物処理事業において従来の施設運営からの方針転換の検討が求められるのではないか。
 一つは、施設運営における自動化の推進である。コロナ感染が広がる以前、わが国の景気拡大を受け、施設で運営を担う人員確保が難しい施設も少なくなかった。一方、コロナ感染のリスクが常態化することで、施設内で多くの人員が作業する状況を回避する必要が生じ、設備運営面では必然的に自動化要素を増やすことが求められるようになった。近年、各民間事業者では、AIを活用した燃焼効率の向上やクレーン操作の自動化、維持補修の効率向上等が行われるようになってきたが、そうした動きはさらに加速するはずである。
 次に、施設の集約化方針の調整である。現在、環境省の政策方針を受け、施設の「広域化・集約化」のさらなる推進に向けた計画策定が都道府県によって進められているが、このうち集約化について、一部は推進を見合わせ、分散化したままでの処理が必要になる可能性がある。施設を集約化して効率性を高めることは、廃棄物処理に要する財政負担を緩和するためにも重要であるが、一方で集約化された後の大規模施設では、そこで働く人員の増加や当該施設に感染が発生した場合の処理能力低下のインパクトが大きくなる。敷地や施設の面積を広く確保できるなど、一定の条件を満たし感染予防を徹底できる場合は集約化に問題が生じないケースもあろうが、一般には限られた敷地内で施設が整備される場合が多く、感染リスク回避の観点から集約化を見送るケースが出てくると推察される。
 もう一つが、施設稼働における余裕度の維持である。近年、焼却施設の稼働率はごみ排出量の減少等を受けて低下傾向にあり、60%を下回る施設も少なくない。これまではこうした低い施設稼働率を改善し、処理単価の上昇を抑制していく方針が大勢であったが、コロナ感染による施設の稼働停止リスクが無視できない環境となったことで、他施設停止時の受け入れ能力を確保することの意義が見直される可能性がある。財政負担縮減の議論と併せた検討が必要になるが、ごみ処理を停滞させないことを政策目的とした場合、一般廃棄物処理施設での感染によって処理が滞っても、他自治体の施設で受け入れることで処理システムを機能させ続けることが必要である。他の民間施設で処理するよりもコストも抑えられる。近年の災害増加により災害廃棄物の処理能力を確保する必要性が高まっていることも、施設の余裕度の維持が支持される一因となろう。

withコロナ時代に適応しうる廃棄物処理に向けた事業視点
 こうした方針転換が生じると、従来の1施設の整備・運営を基本とした廃棄物処理事業の在り方を更新していく必要が生じる。
 まず自動化された施設では、求められる人材像が変わる。焼却施設の運転や再資源化施設の選別等に従事する人員数が圧縮される一方、自動化され、より高度にシステム化された設備を制御できる技術者が必要とされる。遠隔監視システムやそこで監視を担う技術者の重要性も高まるであろう。
 分散化した施設を一体的に運営する事業ノウハウが求められる可能性も高い。施設の集約化が進みにくくなる場合でも、広域化は処理の効率向上の観点からも推進されていくためである。従来別々の自治体が自らの施設を運営していたところを、広域化により複数自治体が一体で運営を図り、施設集約せずに分散化した施設を一体運営する形態である。この場合、特定の施設でトラブルが生じた場合を想定し、トラブル対応を担う人員をどのように配置するかなど、これまでより事業運営における工夫余地が生まれる。その事業運営の巧拙が自治体間の処理に要する財政負担の水準差となってくる。単独の施設の整備・運営を民間事業者に委ねるだけではなく、複数自治体が構築する処理システムをどのように機能させるかを、設備投資、人員配置、運営手法といった多様な事業視点から検討していくことが求められよう。
 いずれの場合でも、各自治体が自らの状況に応じて、感染リスクに対応すべく、事業視点から今の施設整備・運営の在り方を考え直す試みが期待される。

コロナ感染を施設からの価値創出の契機に
 事業視点からwithコロナ時代の廃棄物処理を考えていく際に、自動化設備の導入や分散化施設の一体運営、余裕をみた稼働率設定などを勘案すると、廃棄物処理に要する財政負担を縮減することが、従来よりも難しくなってくる。むしろ感染リスク下においても安定した処理システムを維持するためにコスト負担を許容しなければいけない側面が生じてくる。
 そのコスト負担を緩和する対策の一つが、施設の一層の長寿命化の促進である。ライフサイクルでの処理単価を低減するため、近年、国の交付金・補助金制度を背景に焼却施設の寿命を延ばす動きが各地に広がっており、50年の施設活用を目指す自治体も出てきている。withコロナ時代においても、さらなる施設インフラの長期利用が期待される。また、施設構造を見直すことによるシンプルな感染対策が想定できるかもしれない。建屋の構造を通気性の良いものとし、従来の運転体制のままでも感染リスクを回避する方策も考えられよう。
 もう一つが、廃棄物処理事業を通じて地域に新たな価値を生み出すことである。環境省も政策方針として掲げているが、廃棄物処理施設を通じて地域に提供できるメリットを広げていく方向性である。廃棄物発電による電力を地域の公共施設に供給する試みや敷地内でのEV等の充電設備導入、避難拠点としてのスペース・機能の確保などは、近年実績が増えつつあり想定しやすいが、withコロナ時代でも安定処理を継続するために、さらなる価値創出の可能性検討が必要になる。
 住民から支持される価値が廃棄物処理事業を通じて地域に生み出されると、住民の施設に対する見方が変わる可能性がある。この見方の転換により、施設が近隣にあることを住民がポジティブに受け止めるようになれば、施設立地の選択肢が広がるし、さらなる価値を地域に提供できる余地も生まれる。都市部での立地が、施設から近隣の公共施設・医療施設等への熱・電気の供給や、避難拠点としての機能提供、施設機能の利用頻度の増加等の可能性をさらに高めるからである。

withコロナ時代に適応可能な処理システム構築に向けて
 コロナウイルスによって、わが国の廃棄物処理事業に重大な影響がもたらされているが、社会情勢が変化する中においても、安定した処理システムの維持は不可欠である。持続可能な廃棄物処理システムの構築に向け、緊急事態宣言が解除された今こそ、公共と民間双方の関係者とともにwithコロナ時代に適応していくための行動を始めていきたい。
以上


※記事は執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。
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