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内向き志向をどのように受け止め、それに向き合っていくか

2020年05月13日 中村恭一郎


 新型コロナウイルス(Covid-19)との世界的な闘いは、依然として一進一退の状況にあります。最前線で闘う医療従事者の方々、食料品や生活必需品の生産、物流、販売を絶えさせまいと取り組まれている方々、この難局を一日でも早く乗り越えるべく力を尽くされている全ての方々に心からの感謝と尊敬の気持ちを表したいと思います。

 筆者がこの10年ほど携わってきました海外都市・インフラ開発プロジェクトは、成長を続ける新興国の旺盛な投資需要を見据えて、日本が誇れる質の高いインフラや、長い時間をかけて蓄積してきた都市開発のノウハウを現地に展開し、日本の成長の原動力を得ようとするものでした。ここで筆者が大切にしてきましたのは、海外の成長市場を獲りにいくといった発想ではなく、将来に向けて前向きに活動するパートナーを探し出し、パートナーと共に成長できる、将来に残るプロジェクトを共創するのだという気持ちです。この先も、この気持ちを大切にしたいと思うとともに、新型コロナウイルスがもたらしたこの困難な状況の中で心に留めておきたいと感じることがあります。

 それは、経済や社会の「内向き志向」をどのように受け止め、それに向き合っていくかということです。この新型コロナウイルスとの闘いでは、私達は当面の間、守りを固めざるを得ません。ただ、ここで、国と国、地域と地域が相互依存を深め、分業を通じて共に成長し、その果実を分かち合ってきた「グローバル経済の善い側面」が失われかねないことを、筆者は危惧しています。この闘いが長期に及ぶと考えられる中では、例えば、企業が強靭なサプライチェーンを求めて、生産拠点の国内回帰や多元化を進めるといった取り組みは有効であると考えています。しかしながら、筆者は、不確実な未来に備えようとするあらゆる取り組みが、この未知なるウイルスとの闘いの中においては、時に、保護主義的な経済思想や排外主義的な気持ちを呼び起こしかねないことにも敏感でいたいと思います。

 今回の危機の原因が、グローバル化した経済、社会にあるとする意見も聞かれます。それも一面の事実ではあるでしょう。もとより、グローバル化には賛同も、批判も、様々な意見があることは承知しています。いわゆる「Before Corona」のときと同じようにグローバル経済が復活するのが相当に難しいことであろうことも理解しているつもりです。ただ、筆者が携わってきた海外プロジェクトでは、高い目線を有し互いを認め合い、共に成長しようとする前向きなパートナー達に多く出会ってきました。こうしたプロジェクトに共に取り組んできた日本国内のお客様も大切なパートナーです。今後、世界のありようは大きく変わるでしょう。それでも筆者は、「世界は依然開かれている」と信じたいと思います。人と人、国と国、地域と地域が、今後もつながりを深め、また一歩ずつ、共に成長できる機会を創り出していけるように、この困難な事態が一日も早く収束することを願っています。

 ※このメールマガジンは4月30日に執筆しました。


※記事は執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。

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