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リサーチ・フォーカス No.2020-004

【新型コロナシリーズNo.18】
新型コロナを機に刷新が求められる観光政策

2020年05月12日 高坂晶子


2020 年に入って新型コロナウィルス感染症(以下、新型コロナ)が流行したことにより、旅行・観光業は大きな打撃を受けた。政府はこの状況に対応するため、本年度の第一次補正予算に大規模な需要喚起をはじめとする観光振興策を盛り込んだ。しかしながら、その内容は従来の延長線上にあり、新型コロナがもたらした環境変化に対応しておらず、期待通りの効果が上がるか不明である。

新型コロナからの回復をはかっていくうえでのわが国観光産業の課題としては、まず、長期にわたり低下が予想される観光客の消費意欲をいかに喚起していくかが最重要といえよう。次いで、人と人との接触による感染リスクを懸念する受け入れ側の地域社会・住民の不安心理払しょくや、観光客の集中を生じさせることのない受け入れ規模、顧客構成の多様化などをいかに実現するか、といったことが挙げられる。

このような課題を踏まえて補正予算の中身と問題点を指摘すると、以下の通りである。まず、従来の「ふっこう割」に倣ったGo to キャンペーンは、感染の収束後、ただちに宿泊料その他を軽減して旅行や飲食、買い物といった需要の創出を目指すものである。しかし、今回の新型コロナの場合、人と人との接触による感染の危険性を完全に払しょくすることは難しいため、お得さを売りにしたキャンペーンでは、消費者の意欲が期待通りに高まらない恐れがある。

加えて、観光用のコンテンツ開発や滞在環境の整備、プロモーション活動等、観光地向けの支援に限っては、多言語表記の推進など、これまでのインバウンド重視の方針が堅持されている。しかし、過去に観光が自然災害等により打撃を受けたケースをみると、回復過程を主導したのは日本人による国内旅行者であり、需要喚起を図るターゲットとしての優先順位に疑問が残る。

今後は、新型コロナによって変化した事業環境を踏まえ、観光振興策を刷新することが望まれる。具体的には以下の三点が考えられる。

第1に、インバウンド中心の振興策を見直し、ファーストターゲットとして、日本人旅行者の需要を喚起することが望ましい。具体的には、安全・安心への要求水準が高い日本人消費者に対応し、感染の危険性を極力抑えうる滞在環境の整備やコンテンツの開発が考えられる。

第2に、これまでのように、特定の国の旅行者や健常者をターゲットとした営業態勢を見直し、顧客構成の多様化と新規開拓を図ることが望まれる。多様な国からの来訪者を受け入れたり、高齢者・身体障碍者が容易に旅行できるユニバーサル・ツーリズムへの取り組みが求められる。

第3に観光客を受け入れる地域社会・住民の態勢を整える必要がある。従来、観光は地域創生の切り札に位置づけられ、重視されてきたが、新型コロナの感染拡大以降、観光に消極姿勢を示す地域や住民が増えることが懸念される。感染の危険性を低下させる取り組みを継続するとともに、情報開示と丁寧な説明を行って地域住民の不安感を払拭することが求められよう。

・新型コロナを機に刷新が求められる観光政策(PDF:571KB)
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