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RIM 環太平洋ビジネス情報 Vol.20,No.77

中国経済の減速と民営企業-なお続く「国進民退」

2020年05月19日 三浦有史


中国の国有・国有持ち株企業は総資産利益率(ROA)が民営企業より低いことに加え、資産負債比率が高いため、「国進民退」によって成長減速に拍車がかかる可能性がある。一方、民営企業は経験したことのない難局に直面しており、経済をけん引する力が弱まっている。

中国では従来のスケールでは捉えきれない新しいかたちの「国進民退」が進んでいる。そのひとつは投資における「国進民退」である。リーマン・ショックのような非常時ではない時期に国有・国有持ち株企業の投資が高い伸び率を示したことは過去に例がない。政府は中国経済を国有企業と民営企業という二元論で捉えるのは間違いだとし、「国進民退」にかかわる議論を封印しようとしている。

利潤における「国進民退」も新しいかたちの「国進民退」といえる。利潤全体に占める私営企業の割合は、投資における「国進民退」が顕在化した2016年から低下し、2018年には国有・国有持ち株企業の割合が私営企業を上回る逆転現象が起きた。企業が定款を変更し、意思決定における共産党組織の関与を明記するようになったこと、また、「救済基金」によって民営企業の実質的な国有化が進んでいることも、新しいかたちの「国進民退」といえる。

民営企業は「融資難融資貴」と称される資金調達難に直面しており、中国経済の先行きに暗い影を落としている。「救済基金」は株担保融資を受けている上場民営企業の救済に一定の役割を果たしているものの、「国進民退」をいわば平和裏に進める手段として機能している。民営企業は銀行融資だけでなく、債券市場における資金調達でも苦戦を強いられており、潜在成長率は一段と低下すると見込まれる。4兆元の資金を調達した「政府引導基金」は投資における「国進民退」を加速すると思われる。

「国進民退」を危惧する市場経済推進派は劣勢であり、是正の機運は高まりそうにない。習近平政権が「国進民退」を放置し続けると、都市の失業率が上昇する懸念がある。混合所有制改革は、全ての企業の払込資本金に占める国家の割合を上昇させるという当初の想定とは異なる方向に進んでいるが、習近平政権は今後も「国進民退」を容認し続けると思われる。

投資における「国進民退」は、投資効率の低下を通じて中国経済にも深刻な影響を与える。政府引導基金は、優れた企業に資金が集中するメカニズムが働かなくなることで技術革新の停滞を、また、地方政府の投資衝動を刺激することで投資効率のさらなる低下を招来する可能性がある。
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