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JRIレビュー Vol.5,No.77

わが国とニュージーランドのシニア就業を巡る環境の比較-働く意欲の維持と働きやすい環境の整備が鍵

2020年05月13日 安井洋輔


政府は、2019年末の全世代型社会保障検討会議で、人生100年時代に対応し、エイジフリーで活躍できる社会の実現を改革の方向性として打ち出した。実際、長寿化に伴い、就業することで老後の生活資金にゆとりを持ちたいと考える65歳以上高齢者(以下、シニア)は増えている。しかし、こうした潜在的なシニア労働力は十分に活かされていない。今後、シニア就業を巡る環境を整備していくにあたり、望ましい雇用システムの在り方について、様々な角度から検討する必要がある。

本稿では、ニュージーランド(以下、NZ)とわが国を比較し、望ましいシニア雇用システムを実現するための課題を検討した。NZを比較対象とする理由は、小国ではあるものの、国民の経済的な豊かさはわが国と同程度であるうえに、ジョブ型の雇用システムのもと、シニア就業が急速に拡大しており、就業者の満足度も高いためである。これには、1980年代以降の果断な行政・経済改革も影響している。

就業インセンティブ、仕事の機会、雇用可能性という三つの観点からNZの労働市場をみていくと、就業インセンティブという点で、定年制の禁止と所得に応じて減額されない年金制度を背景に、シニアはできるだけ長く働こうという意欲を保つことができている。また、仕事の機会という点では、厳格な年齢差別の禁止のもと、採用活動においてシニアは不利益を受けず、勤務条件も柔軟で働きやすい状況にある。さらに、雇用可能性では、シニアも職業教育訓練の機会を活用し、雇用され得る能力を維持しやすい環境にある。

こうしたNZの事例を踏まえると、わが国にはシニア就業を促進できる余地が多く残されていると考えられる。まず、定年制を廃止すると同時にジョブ型雇用システムに移行すべきである。また、年齢差別を厳格に禁止し、採用機会を確保するほか、シニアそれぞれの事情に応じた柔軟な働き方を実現すべきである。さらに、職業教育訓練の質・量の拡充によって、シニアのスキルを底上げすべきである。
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