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企業意思決定と新型コロナウイルス~前例なしの対応で問われること~

2020年04月14日 渡辺珠子


 新型コロナウイルスが、世界中で猛威を振るっています。各国とも感染拡大を抑え込み、医療崩壊を未然に防ぐため、人の移動や集会に対して様々な規制や要請を出し、その結果として経済活動に大きな影響が出ています。移動や集会が以前のように自由に行える状態に戻るにはどの程度の期間が必要になるのか、現時点では明確な予測は出ていません。当初は中国の回復を契機として世界の景気も回復していくという早期回復シナリオを提示していた米国の研究機関もありましたが、感染がアメリカとヨーロッパに拡大した現在ではそのシナリオは無くなりました。最悪のシナリオの一つは新型コロナウイルスが変異して、再感染を含む感染の脅威が一気に高まることです。ただ、現時点では変異に関する報道はなく、治療薬やワクチンがどの国でも手に入る状態になる、もしくはその可能性がはっきりすることが景気回復への大きなマイルストーンだと言われています。

 つまり、治療薬やワクチンが入手可能な状態になるまで、現在の移動や集会に対する制限が完全に解除されることはないと考えるのが妥当でしょう。東京オリンピック・パラリンピックの開催が約1年延期になったとは言え、1年後には以前のように移動が自由に行える環境になることが保証されているわけではありません。当座、医療崩壊を防ぐ手立てが何よりも優先されるべきであり、引き続き移動や集会が制約されている中で、私たちはどのように企業活動を続け、そしてイノベーションを起こしていくかを考えなくてはいけない状況にあります。

 その際、大きな壁になるのが判断材料の少なさでしょう。根拠とすべき数字が日々刻々と変化していること、様々な推定値や予測値が対象とする範囲が限定的なこと、自社の状況に合致したものが少ないことなど戸惑いは尽きません。例えば、身近な話で言えば、大企業だけでなく中小企業に至るまでテレワークの導入推進のための投資を進めるべきという議論があります。LINEと厚生労働省が行った第1回「新型コロナ対策のための全国調査」では、テレワークを実施している人はわずか5.6%です。しかし、これをもって「足下でそんなにテレワークが進んでいないなら、ひとまず保留にしておこう」とは判断できません。回答者の属性が明確でないという側面もあり、今後、他社の導入が急速に増加するシナリオは十分可能性もあります。足下の導入が仮に少ないとしても、テレワーク導入によって地理的距離に依存せず必要な人材を集められ、それによって近い将来、競争に勝ち抜く付加価値を生む可能性があると考えれば、テレワーク導入は待ったなしのはずです。

 現在、公表されている新型コロナと景気回復に関するレポートは、総論もしくは各論のいずれかに留まるものが比較的多いと感じます。しかし今後の企業経営にとっては、公表されている数字や一見関係なさそうな他国や他産業の状況をどう読み取るか、そして自社に必要な手立てを前例なしで考えられるかがこの状況を生き抜くための肝になるでしょう。中国では武漢市のロックダウン(都市封鎖)が4月8日に解除され、ヒトやモノの移動が約2カ月半ぶりに動き出しました。このなかからは、企業活動の舵取りに有益な判断材料が得られる可能性もあるでしょう。しばらくの間、企業経営にとって有効な情報を見いだすためには、今まで気にしていた領域以外に幅広く目を向ける必要があるといえるでしょう。


※記事は執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。

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