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海外認知症予防ガイドラインの整理に関する調査研究事業

2020年04月10日 紀伊信之、森下宏樹、高橋孝治、高橋光進、田上はるか


*本事業は、令和元年度老人保健事業推進費等補助金 老人保健健康増進等事業として実施したものです。

1.事業の目的
 先ごろ取りまとめられた認知症施策推進大綱では「認知症の発症を遅らせ、認知症になっても希望を持って日常生活を過ごせる社会を目指し、 認知症の人や家族の視点を重視しながら『共生』と『予防』を車の両輪として施策を推進していく。」と、共生と並んで「予防」が一つの柱として明記された。ここでの「予防」とは、「認知症にならない」という意味ではなく、「認知症になるのを遅らせる」「認知症になっても進行を緩やかにする」という意味であるとされている。
 今後、認知症施策大綱に基づき、各地方自治体において認知症に関する各種施策が展開されていくと想定されるが、現時点では、「認知症予防」に関するエビデンスは不十分である。国並びに地方自治体での政策・施策検討の際には、最新の学術研究等で得られた知見・エビデンスに基づき、検討を進める必要がある。
 令和元年5月には、WHOから「認知症と認知機能低下のリスクを減らすためのガイドライン Risk reduction of cognitive decline and dementia」が公表された。同ガイドラインでは、各種の介入の認知症や認知機能低下に対する影響について、世界的な研究成果を調査し、それを基にエビデンスの質と推奨度、補足説明等がまとめられている。
今後の認知症政策・施策検討の参考として有効と考えられる上記ガイドラインを邦訳し、日本に適用する際の留意点についてとりまとめることが本事業の目的である。

2.事業概要
 本事業では、認知症に関する学識経験者、有識者からなる検討委員会を設置し、以下を実施した。

(1)WHOガイドラインの邦訳
 WHOのガイドライン“Risk reduction of cognitive decline and dementia”に関する邦訳を行った。あわせて、記載内容の根拠となっている論文・研究内容についても可能な範囲で確認し、エビデンスが得られた背景および条件を明確にしつつ、日本での適用時に注意すべき点についても整理を行った。

(2)自治体における認知症診断・支援施策の実態・課題調査
 WHOガイドラインを有効に活用してもらうためには、各地域において施策を展開する自治体側の状況を把握しておくことも重要である。そこで、特定の条件で抽出した自治体を対象に、認知症施策、とりわけ、早期発見と発症予防、重症化予防に関する取り組みや課題についてヒアリング調査を実施した。

(3)ガイドライン活用時の留意点整理
 検討委員会における検討、(1)(2)の実施を通じて得られる示唆等を踏まえて、ガイドラインの内容に基づき認知症予防施策を日本の各地域で展開する際に留意すべき点について整理した。

3.主な事業成果
(1)ガイドラインの概要
 邦訳したガイドラインにおいては、以下の点に関して、エビデンスの質と推奨度、補足説明等がまとめられている。
 ・身体活動による介入
 ・禁煙による介入
 ・栄養的介入
 ・アルコール使用障害への介入
 ・認知的介入
 ・社会活動
 ・体重管理
 ・高血圧の管理
 ・糖尿病の管理
 ・脂質異常症の管理
 ・うつ病への対応
 ・難聴の管理

(2)日本への適用の際の留意点
 特に食生活に関わる記載など、日本の生活環境・文化にそのまま適用することが難しい部分がある。
 また、本邦と海外の違いではないが、エビデンスの評価において、観察研究よりも介入研究の結果を重視している点に留意が必要である。多くの項目でエビデンスの質は「低」か「中」となっている一方で、「強い推奨」がなされていることがある。これはエビデンスの質が低い場合であっても、推奨することが一般的に有益であって害が少ないことが確実であれば「強い推奨」とされている。

(3)自治体における認知症施策の課題
 「予防」施策を各地域で展開する際の示唆を得ることを目的に、①「健康長寿社会の実現を目指した大規模認知症コホート研究(JPSC-AD)」実施自治体、②認知症早期発見に取り組む自治体、計6自治体へヒアリング調査を実施した。
 ヒアリングからは下記の点が課題として整理できる。
・糖尿病等の生活習慣病予防の取り組みと、認知症施策の一体的な展開
・早期発見に向けた検診における医療機関との連携
・早期発見に向けた受診率の向上
・検診後の軽度認知障害(MCI)段階の人の活動や社会参加の受け皿の確保

※詳細につきましては、下記のガイドライン邦訳ならびに別添資料をご参照ください。
【認知機能低下および認知症のリスク低減 WHOガイドライン】
【(別添資料)調査研究の概要と参考資料(自治体ヒアリング結果)】

本件に関するお問い合わせ
 リサーチ・コンサルティング部門 高齢社会イノベーショングループ
 部長(シニアマネジャー) 紀伊信之
 TEL:06-6479-5352 E-mail:kii.nobuyuki@jri.co.jp
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