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人情味にあふれた人のつながりを生み出すコミュニティ・モビリティ・サービス創出へ

2020年03月10日 武藤一浩


 高度成長期における都市部への人口流入の受け皿として、都市郊外部を中心に全国的に開発されてきたニュータウン(本稿では既に開発から数十年を経たニュータウンを、以下「オールドニュータウン」という)。高齢者が増えてきたオールドニュータウンのなかを手軽に安全に移動できるコミュニティ・モビリティ・サービスが必要として長年、地域住民や地域事業者、自治体、民間企業の多くの方々とともに検討や実証を繰り返しています(まちなか自動移動サービス事業構想コンソーシアム)。特に地域住民と話をすればするほど、地域住民とともに構築していくコミュニティ・モビリティは、これからのオールドニュータウンの「まちづくり」を進めていく上で必要不可欠であると感じています。

 2019年12月9日から2020年2月7日の2カ月程度の期間に実施した神戸市北区筑紫が丘周辺での実証では、多くの地域住民がモビリティ・サービスの運営に参加し、地域の自助・共助活動の一環として、車両の運転や運用本部での電話対応、利用参加者の勧誘などを実践されました。参加された住民の方々は、リタイア層の方もいれば子育て世代の母親の皆さんなど、多岐にわたっています。彼らと話をさせていただくと、サービス実証の運営に参加した理由のそれぞれが興味深いものばかりでした。そのなかでも、特に自分が驚かされたのは「交通事業者が単なる仕事としてこのコミュニティ・モビリティ・サービスの運営をされたら価値はない。住民が運営の場に参加するからこそ価値があり、それが住民主体のまちづくりにつながる」といった発言が複数人からあったことでした。

 民間事業者の目線で見れば、サービスの成立に向けて収支を検討し、コスト低減に向けて、地域住民の自助・共助などボランティアの力を活用しながらも、なるべく人が介在しない仕組みとして配車や運転の自動化技術を取り入れ、効率化していくことで持続可能になると考えてしまいがちです。しかし、住民の方々は、運転や電話応対、勧誘など、民間事業者から考えると手間がかかり大変と思っていることが、自然と声を掛け合う大切なコミュニケーションの機会なのだと認識されていました。また、それが地域内の人と人との人情味あふれたつながりを創出し、そのつながりが地域の方々の日常生活を活性化し、災害などの有事にも対応できる強いコミュニティを醸成すると考えておられました。つまり、皆さんがイメージする「まち」とは、地域の人々が関与・参加して作られていくものなのでした(→ こちらをご覧ください)。
 こうした、人の活動が中心となるまちづくりに対して、サービス実証を担う我々が提供すべきモビリティ関連の新しい技術やシステムなどは、住民同士のつながりを創出しながら、住民が主体的にまちづくりを展開しやすくなるようすべきものであり、人を排除するのではなく、人が人とコミュニケーションや合意形成することをサポートできるものであるべき、と方針が見えてきたと思っています。

 前回のコラムでも、日本政府がこれからのまちづくりとして掲げたスーパーシティ構想の最終報告書に、「住民参画」という注目の文言があることをお伝えしましたが、今年に入り内閣府地方創生推進事務局から出た「地域住宅団地再生事業」においても、住民参加(地域再生協議会)が重要視されます。地域住宅団地再生事業は、高度成長期に作られたオールドニュータウンがベッドタウンとしての機能しか整備されていない問題に着目し、今後、将来は商店やテレワーク・シェアオフィス、地域内交通や物流などのシェアができるように多機能化タウンへの変えていくことを目指す事業です。当然、地域内を行き交う機会が増えるため、コミュニティ・モビリティの重要性が増すことになるでしょう。

 オールドニュータウンの再生にむけたまちづくりは、地域住民同士が望む自助共助のまちづくり活動があり、それが国などの地域住宅団地再生事業のような公助の政策を引き込み、最後に民間事業者の投資を呼び込んでいく、といった段階的に成り立っていくと思います。そしてその核は「人情味あふれた人のつながりを創出できるモビリティ・サービス」であると考え、サービス実証を担う我々も精進していきます。ご興味のある方はぜひご一緒いただけますと幸いです。


※記事は執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。
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