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ビューポイント No.2019-029

【税・社会保障改革シリーズ No.43】
幼児教育無償化後の保育の現状と政策のあり方

2020年03月04日 池本美香


2019 年10 月より幼児教育無償化が予定通り実施された。本稿では、幼児教育無償化後の保育の現状を確認し、今後政府として取り組むべき課題について考察する。

幼児教育無償化の問題として、筆者はこれまでに、新たな利用希望や長時間保育が増え、待機児童問題や保育士不足が一層深刻化し、保育の質低下が懸念されること、高所得層に恩恵が偏り、教育格差の拡大につながり得ることなどを指摘してきた。さらに、無償化実施後、次のような問題が伝えられている。①保育料を自由に設定できる私立幼稚園や認可外保育施設における便乗値上げ、②想定より利用者が増えたことによる国の財源不足、③認可外保育施設を無償化の対象外とする自治体独自の措置、④無償化の対象外とされた幼稚園類似施設の存続危機、⑤3 歳児の無償化の扱いが幼稚園と保育所で異なることによる幼稚園希望者の増加。これらはいずれも事前に指摘されていた問題であり、国は質の高い教育をすべての子どもに保障するという無償化の趣旨に沿って、制度設計の見直しを検討すべきである。

見直しの方向としては、まず長時間保育を助長しないよう、無償化の対象を幼稚園の教育課程に係る教育時間に限定し、財源を質の確保に振り向ける。保育士の配置基準を改善すること、保育の質の評価を行いその結果を公表する評価機関を国レベルで設置し、すべての施設に評価の受審と結果の公表を義務付けること、保育者の不祥事等による子どもの被害を防ぐ方策について検討することなどが期待される。

すべての子どもへの保障という観点からは、親の就労の有無や施設類型によって、無償化の対象になるか否かが左右されないようにすべきである。幼稚園類似施設も無償化の対象とし、3 歳児の幼稚園と保育所の無償化開始年齢の差も是正する。

無償化による長時間保育の増加に対して、保育士確保に向けた取り組みを強化する必要もある。OECD の調査によれば、わが国の保育者は仕事に対する満足度が低く、親からの信頼も低いことなどが明らかになっている。働き方改革により保育時間の短縮を目指すことや、保育者と親との関係改善に向けた取り組みが期待される。

財源の制約が一層強まることを考えれば、データをもとに政策の効果を検証しつつ、限られた財源を無駄なく有効に使うことも求められる。国は無償化が保育時間、保育士不足、教育格差、保育の質などに与えた影響を調査し、その上で、必要な対策や制度の見直しを行うべきである。財源の有効活用の観点からは、改めて所管省庁の一元化やICT の効果的な活用の推進なども検討が期待される。

幼児教育無償化後の保育の現状と政策のあり方(PDF:682KB)
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