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ビューポイント No.2019-028

新型コロナウイルス禍にどう対処するか~当面の景気下振れを甘受しつつ合理的な行動を~

2020年02月26日 山田久


2019 年末に中国湖北省武漢市で発生した新型コロナウイルス感染は、年明け以降急激な拡大をみせ、中国経済を麻痺状態に陥らせている。2020 年1~3月期の中国の経済成長率は、当局が正確な数値を公表するかどうかは別として、相当程度の落ち込みを示すと考えるのが自然である。短期収束を前提とすれば、4~6月期には回復に向かうであろうが、数カ月における経済機能麻痺状況からの復旧にはそれなりに時間が掛かり、元の成長ペースに戻るのは早くとも夏場頃とみておく必要があるだろう。

中国の世界経済でのプレゼンス拡大、グローバルサプライチェーンの深化を勘案すれば、新型コロナウイルス禍による中国経済の落ち込みは、①インバウンド減少、②サプライチェーンの寸断、③中国向け輸出の減少、等様々なルートでの世界経済へのマイナス影響の波及を想定する必要がある。とりわけ影響が無視できないのはアジア地域で、欧州経済への影響も小さくない。米国経済への影響は当面、相対的に軽微にとどまろうが、中国経済の正常化が大幅に遅れる事態となれば、米国経済も無傷ではいられない。

わが国経済にも相当程度の悪影響が及ぶことを覚悟する必要がある。すでにインバウンドの激減でマイナス影響は顕在化し、外出・会食の自粛による飲食・娯楽産業へのマイナス影響も広がり始めている。中国での工場稼働率の低下は国内生産の供給制約につながりかねず、中国経済の大幅下振れに伴ってわが国輸出が落ち込むことは避けられない。結果として、1~3月期の実質成長率の相当程度下振れすることは必至であり、4~6月期についても従来想定されたパスから経済活動水準の下方修正が生じる可能性が高い。

当面、感染拡大の封じ込めを最優先することが重要で、政府は感染拡大抑制に向けた予防的措置を保守的に運用する必要がある。この結果、当面経済活動が大きくスローダウンしても、感染拡大防止を優先することが、中期的な経済にはプラスになる。そのうえで経済的な「二次災害」が起こらないよう、資金繰り対策や雇用調整助成金の活用など、企業への万全な支援策を講じることが重要である。

半面、各経済主体は過度に委縮するのではなく、合理的に冷静に行動することも重要である。そうした観点から、現局面で特に注意が必要なのは春季労使交渉への影響である。リーマンショック後の動きを振り返ると、ドイツやスウェーデンでは賃金の増勢維持が個人消費の落ち込みを防ぎ、スムーズな経済復調を可能にしたが、わが国では賃金を大幅にカットし、いわゆる「履歴効果」が大きく働いて、デフレ経済が深刻化した。

そもそも今春闘は、「官製春闘」が綻びをみせるなか、労使による自主的な判断で持続的な賃上げの流れが継続されるかどうかが試される、極めて重要な位置づけにある。一時的なショックによる影響は、必要であれば賞与のカットによって対応し、基本給の引き上げ(ベースアップ)は済々と着実に実施していくことで、個人消費の腰折れを防ぐという発想が、いま労使に求められているといえよう。

中長期的な観点から、今回の新型ウイルス感染拡大の経済活動面での教訓を生かすことも重要である。それは、生産拠点や市場を特定地域・国に集中的に依存することのリスクにほかならない。今後の中国経済の回復力如何にかかわらず、「チャイナリスク」を様々面から再度直視し、生産拠点や販売市場の分散に取り組むべきである。

新型コロナウイルス禍にどう対処するか~当面の景気下振れを甘受しつつ合理的な行動を~(PDF:703KB)
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