RIM 環太平洋ビジネス情報 Vol.20,No.76 東南アジアのスタートアップの進化と活発化する日本企業との連携-東証マザーズ上場を展望して 2020年02月19日 岩崎薫里東南アジアでは、スタートアップの活発な立ち上げが続くなか、ユニコーンが相次ぎ登場している。ユニコーンは潤沢な投資資金を活用してほかのスタートアップを買収するなどしながら、成長を加速させている。ユニコーン以外に目を転じても、スタートアップの事業の裾野が拡大していることが確認出来る。スタートアップの立ち上げが活発化した当初はB2C(個人向け)事業が中心であったが、ここにきてB2B(法人向け)事業も目立つようになった。また、当初は先進国で成功した事業やビジネスモデルを移植するタイムマシン型が多かったが、最近ではそれに加えて、先進国との時間差を感じさせない事業内容のスタートアップも登場している。こうしたなか、日本企業が東南アジアのスタートアップとの連携に乗り出している。当初は新興企業が多かったが、最近では伝統的な大企業も連携の動きに加わるようになった。その目的としては、①連携を足掛かりに東南アジア市場を新規開拓する、もしくは既存事業を強化する、②モビリティやブロックチェーンといった最新技術を獲得する、あるいは新しいトレンドに対応する、の2通りがある。一方、東南アジアのスタートアップが日本企業と連携するのは、主に①日本企業が保有する技術の獲得、②日本企業が保有するネットワークの活用、③日本進出への足掛かり、のためである。日本企業と東南アジアのスタートアップとの連携は、東南アジアでの日本の存在感の低下に歯止めをかける1つの方策となり得る。連携を通じて東南アジア市場の新規開拓・事業強化を実現出来れば、日本企業の競争力の向上につながる。それに加えて、連携の副次効果として、①東南アジアの抱える課題とビジネスチャンスに気づく、②東南アジアの変化の波に乗る、③東南アジア企業の成長に寄り添う、が可能となり、それらも日本企業の競争力の向上に資する。日本企業は東南アジアのスタートアップに対して、成長ステージに応じて様々に支援しつつ、連携を深めることが可能である。支援方法の1つとして、日本最大の新興企業向け株式市場である東証マザーズへの上場の道をスタートアップに提示することが考えられる。東南アジアでは株式市場が未発達なことから、スタートアップのエグジットはこれまでM&A中心とならざるを得なかった。IPOを行いたいスタートアップを東証マザーズに誘致することで、日本企業も当該スタートアップとの一段の連携強化が期待出来る。また、これを継続的な流れとして定着させることが出来れば、東南アジアにとっては日本の豊富な資金で企業の成長が支援されることになり、日本にとっては投資家が自国の株式市場で高成長企業に投資する機会が提供され、個人金融資産の有効な活用方法となる。さらに、東京証券市場の活性化と、日本・東南アジア間の紐帯強化にもつながることになる。東南アジアのスタートアップの東証マザーズ誘致には高いハードルが存在するのも事実である。しかし、それらを乗り越える努力を行うに値する十二分な成果が期待出来ると判断される。 関連リンク《RIM》 Vol.20,No.76・東南アジアのスタートアップの進化と活発化する日本企業との連携-東証マザーズ上場を展望して(PDF:927KB)・India Stack:高質化・広範化を目指す中国のフィンテック政策(PDF:1007KB)・製造業の再生に向けて動き出した韓国-再生を図る政府 事業の再構築を進める財閥(PDF:1086KB)・中国企業のタイ進出と在タイ日系企業への影響(PDF:1547KB)