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RIM 環太平洋ビジネス情報 Vol.20,No.76

中国企業のタイ進出と在タイ日系企業への影響

2020年02月19日 熊谷章太郎


中国企業は国際競争力の高まり、国内労働コストの上昇、米中貿易戦争の深刻化などを背景に、東南・南アジアでの事業展開を本格化させつつある。他方、タイ政府も資本・知識集約型産業における中国企業の誘致活動を積極化させており、中国企業のタイ進出が活発化し始めている。ただし、その多くは今後の事業拡大に向けた協力の覚書締結や事業計画の発表など、実際の投資・生産活動に至る前段階のものであるため、国際収支統計における中国のタイに向けた直接投資に現状顕著な増加は認められない。

先行きを展望すると、①労働コストの高いタイへの労働集約型産業の生産シフトは限られる公算大であること、②初期投資コストの大きい製造業における投資の意思決定・実行には時間が掛かること、③中国企業の関心の高いEEC(東部経済回廊)地域のインフラ整備が途上であること、などを理由に、短期的には中国企業のタイ進出ペースは緩やかなものにとどまると予想される。

中期的には、投資先の選定プロセスの終了やインフラ整備の進展などを受けて中国企業のタイ進出は本格化していくと見込まれる。日系企業が長年にわたりタイ向け直接投資を積み上げてきたことを踏まえると、中国企業がたとえハイペースでタイ事業を拡大しても、在タイ日系企業の相対的なプレゼンスの優位は揺らがないだろう。ただし、中国企業が高い国際競争力を有するEV(電気自動車)、次世代通信技術、AI(人工知能)などの分野でタイ事業を拡大すれば、長期的に中国のプレゼンスが大きく高まっていく可能性がある。
 
中国企業のタイ進出拡大が在タイ日系企業に与える影響については、競合と補完という視点から捉える必要がある。中国企業による経済インフラの整備などは在タイ日系企業にもプラスとなりうる一方、自動車関連産業への参入はわが国企業にとって逆風となりかねない。中国企業との競合が予想される業種においては、タイ市場における優位性を維持するべく、新技術への対応を加速するとともに、中国企業の製品・サービスとの差別化戦略を強化することが求められる。
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