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【スマートインフラ】
IoT時代に輝くエネルギーデータ

2020年01月28日 瀧口信一郎


 近著「エナジー・トリプル・トランスフォーメーション(井熊均・瀧口信一郎・木通秀樹著、エネルギーフォーラム社)」で、日本は(1)広域とローカルなグリッドの共存、(2)グリッドと燃料ネットワークの併存、(3)デジタルデータを用いた価値創出、という3つの変革を同時に進めるべきと指摘した。ドイツの風力発電普及のような単純な戦略が通用せず、方向性を見失っている再生可能エネルギー資源小国日本が、目指す方向を明確にして投資資源を集中し、日本のエネルギー変革が着実に進むための処方箋を書いた。
 3つの変革の中でデジタルデータを用いた価値創出は全産業の共通テーマであり、これを否定するエネルギー関係者はさすがにいないであろう。エネルギー分野ではデジタル化の取り組みが遅れていたが、関心の高まりや具体的な活動が出てきていると実感する。日本のエネルギー産業でも変革を志す動きがあることは心強い。

 ただ気になるのは、カスタマー・エクスペリエンスなどデジタルのキーワードを追い、消費者ビジネスの観点からデジタルトランスフォーメーション(DX)をエネルギー分野に適用しようとする動きばかりが先行してしまっている点である。エネルギーデータは、フェイスブックなどSNSで収集されるような、人の細かな趣味嗜好を描き出すことはない。したがって、エネルギーデータは、それほど消費者のマーケティング分析に強みがあるわけではない。GoogleやAmazonが行ってきた消費者のマーケティング分析の領域で戦えば、エネルギーデータの特性は活きない。スマホデータのビジネスに取り込まれてしまうのがオチだろう。
 データビジネスもセンサー、システムなどの投資を伴う。効率化、改善、利便性向上などがキャッシュフローを生み出して、投資回収が成り立たなければならない。エネルギーデータがどのような価値を生むかを正しく認識する必要がある。

 創発戦略センターでは、中国の工場でエネルギーデータを用いて省エネと生産プロセス改善を同時に実現するプロジェクトを進めている。エネルギーデータを追えば現場の状況が手に取るように分かる。なぜなら、エネルギーデータは設備の稼働や人の動きの結果だからである。
 エネルギーデータが大きく変動していれば、生産に何らかの問題が生じている可能性が高い。エネルギー消費を安定させるという目標を置けば、設備稼働が安定する。設備稼働が安定すれば、省エネになる。設備稼働が安定すれば、人のミスが減る。設備稼働が安定すれば、品質が向上する。設備稼働が安定すれば、廃棄ロスが減少する。といったように生産プロセスの改善効果にもつながる。このようなエネルギーと生産活動の関係は普遍的であり、「エネルギーと生産の基本原則」ともいうべきものである。この基本原則に従えば、省エネと生産効率改善を同時に達成できるのである。

 この基本原則は、様々な領域に応用可能であろう。エネルギーデータが人の動きや設備の稼働を現してくれることを核心だと見据えて、エネルギー×不動産、エネルギー×交通、エネルギー×農村など、エネルギーデータを他分野でもキャッシュフローを生む仕組みにできれば、新たなビジネスが生まれてくることが確実である。
 エネルギーデータはモノの情報を扱うIoTとして最も有効性を発揮する種類のものである。エネルギーデータの特性を踏まえつつ、エネルギーに留まらない価値創出を目指すアプローチが大切である。

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※記事は執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。
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