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JRIレビュー Vol.4,No.76

自動車関係課税のあるべき方向性を考える

2020年04月23日 立岡健二郎


昨今、カーシェアリングや次世代自動車の普及など、自動車を取り巻く環境が変化している。それに伴い、現行の自動車関係税制には新たな課題が生じている。しかし、現行税制はこうした変化に対応できる体系になっておらず、今後抜本的改革が不可欠である。改革の方向性を考えるにあたり、なぜ自動車に課税するのかという原点まで立ち返り、本来あるべき姿を検討する。

現行税制には、かねてより、税体系が複雑で課税の趣旨が明快でない、ユーザー間の税負担に格差があるといった課題が存在していた。昨今の環境変化に伴い、新たに、燃費性能が高い、または、従来の燃料税がかからない次世代自動車と、従来のガソリン車との間に税負担の格差が生じている。これまでのように「燃料課税=利用に応じた課税」とみなすことはもはや難しくなり、自動車関係の税収基盤が中長期的に揺らぎかねない事態が生じている。

わが国と同様の問題に直面しているアメリカやEUでは、いずれも、道路の利用者がその整備等にかかる費用を負うべきという考え方が原則とされており、現在、走行距離等に応じた課税・課金を行う方向に進み始めている。さらに、アメリカとEUにおける議論の共通点として、自動車関係税制の在り方に関して、①道路を含む交通政策の視点から検討されている、②定量的な分析に基づく議論がなされてきた、という点を見出すことができる。これらはいずれも、わが国のこれまでの自動車関係課税の議論において乏しかった点であり、注目される。

以上を踏まえれば、わが国でも、今後は自動車関係課税の課税原則として「利用者負担」「汚染者負担」を明確に掲げ、それに沿って税制の簡素化を図ることが求められる。こうした方向性に沿った改革案を一つの例としてデザインしてみると、「走行税」「重量税」「環境税」の三つのパートに分けたうえで、それぞれ「走行距離」「重量×走行距離」「CO2排出量」に応じて課税する税制が考えられる。税収規模については、わが国の厳しい財政状況などを踏まえると、少なくとも現行の自動車関係税収の規模を縮小できる余地はないと考えられる。

税収中立のもと、上述の改革案において車種ごとの税負担が現状からどのように変わるのかを試算してみると、普通乗用車などが負担減、営業用貨物車やバスが負担大幅増という結果になった。現行税制は、道路損傷という面を中心に負担原則から著しく乖離していることが明白になった。

今後、自動車関係税制については、なぜ自動車に課税するのかという原点に立ち返った抜本的改革が不可欠である。これまでの政府・与党の税制調査会(税調)における議論の内容やそれに基づく実際の改正内容などを振り返ると、課税の原点に立ち返った本質的な議論が掘り下げられることなく、マイナーチェンジが繰り返されてきた感が否めず、これまでの議論の延長線上で、本来あるべき税体系に近づけるかどうかは心もとない。こうした現状を打開するための方策として、①税調での議論の前に、まずは道路を含む交通政策を検討する場において、改革の方向性を打ち出すこと、②定量的事実・分析に基づく議論を行うこと、が求められよう。
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