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JRIレビュー Vol.1, No.73

アジア経済見通し

2019年12月24日 塚田雄太関辰一熊谷章太郎


2019年後半のアジア(中国、NIEs、ASEAN5、インド)の景気は、減速基調が続いている。中国では、米中対立による対米輸出の減少などが景気減速の原因となった。それ以外の国・地域では、世界景気の不振を受けた輸出下押しのほか、IT需要の低迷、一次産品市場の軟化に伴う雇用・所得環境の悪化、一部の国における信用不安などが景気を下押しした。もっとも、台湾とベトナム、フィリピンでは、中国のアメリカ向け輸出の代替拠点と位置付けられたことや、政治的要因で途絶えていた公共事業の執行正常化が景気を押し上げた。

アジア景気の先行きを展望するにあたって、以下の三つが注目点となる。第1が米中対立の影響である。問題の根深さを考えれば米中対立の長期化は避けられず、今後もアジア経済はプラス・マイナスの両面から影響を受けるとみられる。マイナス面では、関税引き上げなどによる中国の対米輸出の減少とサプライチェーンを通じての中国以外の各国・地域の対中輸出の減少が想定される。一方、プラス面では、サプライチェーンの再構築を通じて中国のアメリカ向け輸出の代替と、中国からの生産移管という二つの「漁夫の利」的な効果を周辺国にもたらすと期待される。

第2がIT需要の動向である。中国におけるスマホ普及の一巡やデータセンター整備の一服などを背景に、2018年入り以降大きく減少した世界の半導体需要は、今後緩やかな持ち直しに向かうと見込まれる。メモリ価格が反転しつつあることに加え、2020年以降、世界各国で次世代通信規格である5G移行の本格化や、それに伴うデータセンター整備の再拡大などが半導体需要を押し上げるとみられる。

第3が金融政策である。2019年入り後軒並み緩和スタンスへと変化したアジアの金融政策は、2020年以降も緩和的なスタンスが維持されよう。これは、多くのアジア新興国・地域が財政出動余力に乏しいことに加え、世界経済が力強さを欠くなかで輸出のけん引力が乏しく、内需活性化の必要性が高まっているためである。ただし、アメリカで利下げ休止が見込まれることなどから、アジア新興各国・地域の利下げペースは緩やかなものにとどまろう。

2020年以降のアジア景気は、全体としては底堅く推移するものの、二極化傾向が続こう。ASEAN5・インドでは米中対立の「漁夫の利」を受けやすいことに加え、利下げや政府の景気刺激策効果が顕在化してくる見込みである。一方、中国は米中対立の景気下押し圧力が勝り、緩やかに減速するとみられるほか、NIEsは輸出の力強い回復が期待できず、低めの成長を余儀なくされよう。なお、アジア経済を取り巻く環境は引き続き不透明であり、上記見通しが下振れるリスクシナリオも想定し
ておく必要がある。
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