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JRIレビュー Vol.1, No.73

日本経済見通し

2019年12月24日 村瀬拓人


足許のわが国経済は、輸出の減少を受け製造業が低迷しているものの、堅調な非製造業に支えられ、緩やかな景気回復が持続している。

非製造業の堅調さは、経済社会構造の変化を反映している。高齢化や新たなIT技術の台頭に伴い医療・介護や情報通信などの分野で需要が拡大しているほか、製造業の経済活動に占めるシェアがすう勢的に低下したことで、製造業の低迷が非製造業に波及しにくい経済構造になってきている。非製造業の景気けん引力が高まるなか、内外需要が大きく下振れしない限り、景気回復基調は崩れないと判断される。

輸出は、世界的なIT需要の底入れや、設備投資抑制姿勢の緩和がプラスに作用する。世界景気が全般的に勢いを欠くなか、力強い回復は期待しにくいものの、電子部品や資本財を中心に緩やかに持ち直す見込みである。

消費増税後の個人消費も、前回2014年の増税時のような深刻な落ち込みや長期低迷となる事態は避けられる見通しである。増税前の駆け込み需要は前回の4割程度にとどまっており、大幅な反動減は生じない見込みである。また、軽減税率の導入や幼児教育・保育の無償化などを背景に、物価上昇が抑えられていることで、家計の負担増は限定的である。増税後も実質所得がプラスを維持していることから、駆け込み需要の反動減の一巡後、消費は再び緩やかな増加基調に復帰する見通しである。

東京五輪後の景気失速リスクも過度な懸念は不要である。五輪に関連した公共投資は限定的なほか、都心部の再開発など民間投資が増加傾向にあることから、五輪後に建設需要が大きく落ち込む可能性は小さい。ただし、五輪開催期間中は、政府支出の増加と国内外からの観戦客などの消費支出で6,200億円程度の需要が発生すると見込まれるため、その反動減が五輪後の景気を一時的に下押しする見込みである。

以上を踏まえると、成長率の上下変動がやや大きくなりつつも、外需の持ち直しと内需の底堅さに支えられ、緩やかな景気回復が続く見通しである。2020年度および2021年度の成長率は、ともに1.0%程度の緩やかな成長ペースが続くと予想する。

政府は、景気失速リスクに備え、大規模な補正予算を計画しているものの、わが国経済は、景気対策が直ちに必要な状況とはいえない。低成長の持続は需要不足ではなく成長力低下に起因するため、一時的な需要創出策ではなく、デジタル社会に対応した人材育成やデータ活用のためのプラットフォームの整備、政府・自治体のデジタル化など供給サイドへの働きかけを通じた中長期的な成長力強化のための政策対応が必要である。
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