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JRIレビュー Vol.10,No.71

【特集 外国人材の望ましい受け入れに向けて】
5章 外国人雇用の増加による賃金への影響-労働需給面で▲0.2%程度抑制も、一段の人手不足が影響緩和へ

2019年11月28日 下田裕介


外国人労働者の増加に伴う賃金面への影響を懸念する声が聞かれる。本稿では、その影響経路とインパクトの分析を中心に整理するとともに、今後の見方を付言する。

賃金面への影響経路として、①同じ雇用形態・労働条件での外国人労働者の賃金が低いことによる影響ルート、②外国人雇用が可能になることで低賃金部門が存続できる結果、平均賃金が押し下げられるルート、③外国人雇用の増加によりマクロでみた労働需給が緩和され、賃金上昇が抑制されるルート、の三つが挙げられる。

①について、アルバイトでは外国人留学生の賃金が上昇傾向にあり、同じ職務で外国人労働者と日本人との間で処遇が大きく異なるケースは少ないとみられる。それ以外の雇用形態においても、マクロ的には影響は限定的と考えられるものの、ミクロ的には一部の技能実習生が過酷な雇用環境下で働かされるという面を看過できない。

②について、足許で外国人労働者比率が高い産業部門は、厳しい賃金環境では日本人労働者を確保しにくいなか、低賃金の外国人労働者への依存を強めることで経営の継続を図り、その結果として、平均賃金の押し下げにつながっている面があると考えられる。一方、企業規模別にみると、中小企業で同様の傾向がみられる。

③について、マクロの労働需給と賃金上昇率の関係から、外国人労働者の急増により2017年の所定内給与上昇率は、▲0.2%ポイント程度抑制されたと試算される。

政府の外国人受け入れ拡大は、労働需給面では賃金上昇にとってマイナスだが、新たな在留資格は一定の技能レベルを前提としているため、生産性改善の面から賃金上昇にプラスに作用する面も期待できる。人口が減少するなか人手不足が今後一段と強まっていくことを勘案すれば、外国人労働者の増加による賃金の伸び抑制の影響度はこの先希薄化していく公算が大きい。
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