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日本版スチュワードシップ・コード改訂で期待されるESG「原則」化

2019年11月26日 黒田一賢


 2019年10月下旬に英国財務報告協議会(FRC)は2020年1月1日より施行予定のスチュワードシップ・コードの改訂版を公表した。スチュワードシップ・コードは主に運用会社などアセットマネジャー、年金基金等アセットオーナーが遵守すべき行動原則をまとめたものである。

 今回の改訂の最大の目玉は、ESG要因の統合を原則の1つに位置づけたことである。新設の原則7において「署名機関は、スチュワードシップと投資を、重要な環境、社会、ガバナンスの課題、そして気候変動も含めて、自身の責任を果たすために体系的に統合する」との文言を盛り込んだ。そのうえで、署名機関には以下の2点について説明を求めている。

 第1に、スチュワードシップおよび投資の活動に対するESG要因の統合に関して、ファンド、アセットクラス、地理の差異ごとの実態についてである。スチュワードシップとは投資先に対する自発的な働きかけを意味し、投資先との対話であるエンゲージメントや議決権行使がそれにあたる。投資方針においてはESG要因の統合が謳われていても、ESG要因の統合が一律に行われているとは限らず、より実態に関する説明を求めていると言える。

 第2に、顧客・最終受益者の投資期間と整合性を保ちつつ、スチュワードシップおよび投資の活動においてESG要因の統合を行うプロセスについてである。自社で両活動を行う場合はそのプロセス、および一部の活動を外部機関に委託する場合でも、ESG要因の統合を要求事項に含めるためのプロセスを示すということである。

 同コードでは「コンプライ・オア・エクスプレイン(遵守せよ、さもなくば説明せよ)」手法が採用されており、署名機関は遵守する場合には上記原則についての具体的な説明を、遵守しない場合には、署名機関にとって不適当と判断した理由・背景を説明しなければならない。既に多くのアセットオーナーが同コード署名機関であることを運用委託の要件としており、特にアセットマネジャーは同コードに沿った対応を採ることが当然となってきている。またそれをサポートするようにFRCは同コードに沿った開示内容の適切性について、署名機関を評価する取り組みを2016年より行っており、不十分と判断されれば最悪の場合、除名処分となる。

 翻って、日本版スチュワードシップ・コードではESG要因は、投資先企業の状況把握を規定原則3において、指針3-3の把握すべき内容として触れられているのみである。上記の英国版と比較すると、1)指針から原則への格上げ、2)ESG要因の統合範囲を投資だけでなくスチュワードシップ活動への拡大という2点について、改善の余地を残していると言える。金融庁は2020年度内の日本版スチュワードシップ・コードの改訂を目指し、2019年9月より「スチュワードシップ・コードに関する有識者検討会」(令和元年度)を開催している。その第2回会合では参考資料として上記の来年施行予定の英国版スチュワードシップ・コードが提出された。日本版スチュワードシップ・コードにおいてもESG要因の統合が一層前進することを期待したい。


※記事は執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。
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