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今後の地球温暖化対策は、日本の資産と位置付け世界に展開

2019年11月12日 井熊均


 今回も台風について述べたいと思います。今秋、東日本は記録的な豪雨と強風で甚大を被害を受けました。私の住んでいる千葉県ではかつてない被害が出ています。被害を受けた地域の生活が一日も早く日常に戻ることを祈るばかりです。

 だいぶ昔の話になりますが、つくばにある建設省土木研究所ダム部に出向していたことがあります。その意味で治水については多少の知識があるつもりなのですが、今回の豪雨で驚いたのは関東エリアの複数の主要なダムが緊急放流の可能性を報じたことです。緊急放流はダムの貯水能力が限界に達したことを意味しているので、関東エリアの治水機能が限界に迫ったということになります。昨年台風21号で関西が大変な被害を受けましたことを考えると、地球温暖化による台風、豪雨の猛威はこれまで培ってきた治水能力を超えつつあると考えるべきなのでしょう。

 急峻な山並みと狭い平野部から成り雨量が豊富な日本では、古来より治水が政治、行政の重大なテーマとなってきました。ここ2,3年の台風の猛威は、これから一層厳しくなる気候変動に備えるために、治水機能を根本的に見直すべきことを示唆しています。堤防の嵩上げやダムの再整備が必要なことはもちろんですが、重視すべきなのは革新技術を使った統合的な治水機能だと思います。治水とは、恵みであり脅威でもある雨水の変動を平準化して安全に海に流すことを意味しています。その時に重要になるのは、流域にあるダム、堰、貯水池などのインフラをいかに効果的かつ統合的に制御するかです。ITの進歩によって降雨量や河川の流量の予測、広域的な治水機能の統合制御が可能になりつつあります。そこで、限りある資金を水系の統合的な治水機能の制御システムに投じた上で、ダムや堤防のようなハードウェアを効果的に強化する、というプロセスを作り上げるのです。それは国内各地域のリスクを低減するだけでなく、気候変動の猛威に晒される世界中の国々に展開できる日本の資産にもなるはずです。


※メッセージは執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。
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