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日本での5G普及のきっかけは

2019年10月18日 浅川秀之


 5Gとは「第5世代移動通信システム」のことであり、現在のスマートフォンの通信規格として主流であるLTE(Long Term Evolution)の次の世代の規格である。LTEに比べてより「高速大容量」「多数端末接続」「低遅延」が実現可能であり、様々なサービスへの活用の期待が高い。例えば、「高速大容量×低遅延」を活かした遠隔医療システムや「多数端末接続」によるライン構築で工場でのさらなる品質・効率性向上が可能となる。個人利用では、スマートフォンの5G対応端末の普及が期待されており、海外では既にサムソンやソニーなどの5G対応端末が発表されている。日本でも今後商用のスマートフォン端末が順次発売されていくとされ、またその後にiPhoneの5G対応端末も発売されるであろう。

 2019年9月に、NTTドコモが5Gのプレサービスをスタートさせた。ワールドカップラグビーを5G対応スマートフォンで観戦できるイベントが行われることで注目された。このイベントでは、専用の5Gスマートフォンが準備された。しかしながら、実際の通信接続では5Gはあまり使われず、WiFi回線で接続されたようである。まだ5G基地局機器が安定しておらず「多数端末接続」が難しかったことがその理由として報道されていた。本格サービス開始に向けて、解決すべき課題はまだ存在するように見える 。

 総務省は2019年9月に、「ローカル5G」を同年内に制度化、免許申請の受付を開始すると発表した。「ローカル5G」とは、既存の通信事業者ではない一般企業や自治体などが主体となって、それぞれの目的に応じて構築する局所的な5Gネットワークである。通信事業者によるエリア展開が進みにくい地域でも独自に5Gシステムを構築運用可能であり、また他所の通信障害や災害、ネットワーク輻輳などの悪影響を受けにくいため、期待が高まっている。自治体によるデジタルデバイド解消、地域活性化促進だけでなく、中小規模の工場等での活用も見込まれる。総務省としてもできるだけ広く5Gを普及させたいであろうから、制度政策的にも今後は加速がかかるのではないか。

 海外で先行する米国はどのような状況であろうか。主要通信事業者であるAT&Tは2018年12月に企業向けの5Gサービスを、米国12都市で提供開始した。スプリントも2019年5月に4都市で提供を開始、現時点では9都市でサービスを提供している。ベライゾンも2018年10月に5Gの「固定無線アクセス 」サービスを4都市で提供開始し、当時は2019年までに30都市への拡張を目指すと発表していたが実際にはそれほど進んでいないようである。米国では日本よりも1年近く先行して各通信事業者が商用サービスを提供開始はしているが、現時点では合計20都市程度での商用サービス提供に留まっている。またサービスが提供されている都市であっても、実施に電波が受けられるエリアは限られており、普及している状況とは言い難い。

 今後日本ではどのように5Gが普及していくのであろうか。消費者はこれまでの歴史を見ても、通信サービスに対して基本的には「いつでもどこでも」「ブロードバンド」「高品質(途切れない)」そして「安価」を求めている。5Gでも同様と考えられるが、「いつでもどこでも」と「安価」については当初からの実現は難しいであろう。

 昨今では、スマートフォン端末以外にも、タブレット端末など複数端末を保有するユーザーが増えており、加えてデジタルカメラや、家庭にあるテレビや家電などもネットに接続するニーズが増えている。このようなニーズを捉えて「モバイルWiFiルーター」の市場成長が著しい。しかしながら、日本総研の独自予測では、2019年以降もこのモバイルWiFiルーター市場が急成長するかというとそうではなく、飽和傾向を示し、端末数は微増傾向に移行すると見ている。

【図表】 モバイルWiFiルーター市場予測

(出所)日本総合研究所作成
(実績データについては複数の公開調査情報等を基に日本総研で独自に推計、将来データについても日本総研独自のモデルにより予測

 モバイルWiFiルーターは、タブレットなどの主要端末とは別に「もう一台」通信端末として持たねばならず、利便性の観点からはあまりユーザーメリットがないとされる。「それでも安価なら利用したい」という層に対して現在は訴求できている。従って、5G対応のモバイルWiFiルーターが発売されたとしても、当面の間大きく普及することは難しいのではないか(当初は低価格で発売されることはないと思われるため)。

 一方で、モバイルWiFiルーターの「据え置き型」については堅調な普及が期待できるのではないか。家庭内で既に増え始めている様々なネットワーク家電への接続利便性、また引っ越しの際に固定回線のような工事の煩わしさも軽減されること、最近では固定回線に比べて安価な競争力のあるサービスも出始めていることが追い風である。米国での固定無線アクセス の一部普及なども鑑みると、このように家庭への固定回線の代替として普及する可能性は期待できると考えられる。

 スマートフォンの5G対応端末がいかに普及するかは大変注目されている。5Gのブロードバンド性が活かされた画期的なサービスの創出が今後あればよいが、先のNTTドコモのプレサービスの状況などを見ると、まだまだ克服すべき課題は多いであろう。

 以上を鑑みると、日本においては、5G対応の据え置き型モバイルWiFiルーターや、地域活性化や様々な地域課題解決のためのローカル5Gなどが普及のきっかけになるのではないか。前者については、HTCやHuaweiなどの海外端末メーカーが既に商用製品を発表している。また後者についても、政府系の研究会などで自治体等からのニーズの声が聞こえてくる 。これまでは世代が進化する度にガラケーやスマートフォンといった消費者が利用する「ハンディ端末」が普及を牽引してきたが、5G時代においては普及の牽引役が大きく変わるのではないか。

※記事は執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。
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