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【ヘルスケア】
人生100年時代の不安と向き合うために-CONNECTED SENIORS コンソーシアム2019を立ち上げます

2019年09月25日 沢村香苗


 日本総合研究所では「超高齢社会における国づくり」をテーマに、未曾有の超高齢社会において、一人ひとりが生き生きと暮らせる社会の仕組みづくりを目指した政策提言、産業創出・活性化の支援を行っています。このたび創発戦略センターでは「CONNECTED SENIORS コンソーシアム2019」を立ち上げ、人生100年時代を真に充実して生きるための仕組み作りに向けた活動を開始しました。

 人生100年時代という言葉はもはや使い古された感もあるほど、私たちの生活にあふれています。この言葉を聞くとき、皆さんは何をお感じになるでしょうか。そう聞かれても100年というのはあまりに長い時間で、ただなんとなく不安になる、という方が多いのではないでしょうか。
 一人ひとりで見ると、私たちは何歳まで生きるか分かりません。しかし、平均的に見ると高い確率でとても長く生きることが分かっています。さらに、これまで人生を規定してきた、血縁、地縁、社縁といった枠組みは徐々に姿を消しつつあります。長い人生と少ない規定要因は、私たちに大きな自由を与えます。一方で、今していること、これからしようとしていることが適切なのかどうかを判断することはとても難しくなります。何を、何のために、いつすべきか分からないという不安が、人生100年時代の課題だと私たちは考えています。その意味では、人生の長さよりも、枠組みの消失の方が大きな問題なのかもしれません。

 人間が自由を手にした時、必ずしもよいことばかりが起こるわけではないという指摘もあります。「自由からの逃走」(エーリッヒ・フロム著)は1941年に出版された本です。人間が既存の枠組みから自由になったとき、どのようなことが起こったか、全体主義の勃興と関連付けて語られています。その中にはいくつも、今身近に起こっていることにそのまま当てはまるような記述がみられます。

 自由から発生する不安に私たちがきちんと対峙し、よい答えを出し続ける仕組みとして、コンソーシアムではサイバー空間での「自己対話」に着目していきます。自分にとって本当に意味のあることは何か、どんな自分でありたいのか、日々の小さなことがらから大きな決断まで、自分に対する問いかけを忘れずに、楽しく行い続けることが、人生100年時代を充実して生きるための道筋であると考えるからです。その中核として日本総研が提唱するのが、サイバー空間に自分自身の情報を再現する、デジタルツイン「subME」です。subMEは対話を通じて個人に気づきを与え、自ら動機を持って行動することを支援します。同時にsubMEは、対話からの情報をサイバー空間に蓄積します。subMEは蓄積した情報を活用して、新たな仲間や専門家とのコミュニケーション機会を提案します。
 また、個人が虚弱化し意思疎通が困難になった時には、それまで蓄積した情報を支援者と共有し、その個人らしさを尊重した判断を周囲が行うことを助けます。

 CONNECTED SENIORSという名前の通り、私たちはまず高齢者を主役に、この自己対話の仕組みをサービスとして作り上げたいと考えました。それは、「人生100年時代」という新たな課題のリアリティを今最も感じているのが高齢者だからです。高齢者が自己対話を出発点として自分や周りとうまくCONNECTすることで、皆が負担なく支え合い、満たされて生きることが可能な社会を創り出すことが我々の目指すゴールです。

この連載のバックナンバーはこちらよりご覧いただけます。


※記事は執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。
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