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【スマートインフラ】
タイで考える日本企業と海外現地企業の共存共栄のかたち

2019年09月10日 七澤安希子


 タイに進出する日本のメーカーでは、タイ一国という単位ではなく、ASEAN全体のマクロ環境変化を踏まえながら、タイの拠点に今後どれだけの投資を行うか、または行わないかを常に考えているというのが一般的だろう。タイを取り巻くASEAN諸国においては、経済成長による市場の拡大や、現地人材・インフラの質の向上が進み、日本企業にとってタイ国以外への拠点設立の選択肢は広がりつつあるといえる。一方で、1990年ごろから今日に至るまでに構築された世界有数の産業集積はタイの大きな魅力であり、日本企業にとってタイからの撤退という経営判断は容易ではない。ただ、長年関係性を築いてきたタイでは、リストラクチャリングなどの合理的な判断ができる環境となっていることも確かで、工場の老朽化も進む今、日本企業が行うべきは、タイ拠点の効率化を積極的に進めることであろう。

 先日、タイの工業団地に入居する複数の日本企業に、効率化の現状についてヒアリングを行った。すると、省コスト化につながるエネルギー費や人件費の削減方法を検討し始めている企業がほとんどであった。とりわけ先進的な企業においては、削減目標を設定し細かくPDCAを回すための仕組みづくりに取り組んでいた。例えば、以下のような事例が挙げられる。
●タイ人スタッフのみで構成される社長直轄組織の環境管理委員会を設置し、省エネ目標達成に向けた計画作成から生産現場との調整、タイ人指導までを任せている
●工場内の数千単位のあらゆる設備毎に消費エネルギーデータを抽出・可視化するだけでなく、エネルギーのロードカーブ毎に設備をグループ分けし、グループ毎の管理方法を検討している

 他方で、皆さんから聞こえてきたのは、「人材や設備等の自社リソースを最大限効率的に活用する方法を独自に検討してきたといっても、他社とのベンチマーク分析がないと、次にどれほどの費用をかけて投資をすべきかの判断が難しい」といった声であった。さらに言えば、費用対効果を考えれば自社のみでリソース投入するよりも、他社と共通化できる部分は連携して投資する方がより効率性が高まるだろうという期待もあった。こうした第三者的な立場から他社との比較または連携を支援する機能を担えるのは、例えば複数の工場を顧客として束ねる工業団地デベロッパーではないだろうか。

 日本企業のような優良なグローバル企業が、タイから周辺国に流出してしまうことを危惧している現地の工業団地デベロッパーにとって、日本企業の課題を認識し、付加価値サービスとして提供することは、起死回生の一手となる。現在、多くのデベロッパーが、工業団地のスマートシティ化というキャッチフレーズを掲げ、エネルギーや水等の基礎インフラのみならず交通やヘルスケア、教育等の様々な軸を打ち出しながら入居企業への付加価値サービスを模索している。これらの取り組みすべてが日本企業の今の合理化ニーズに合致するとは考えにくいが、例えばエリア全体のエネルギーマネジメントや総務機能の共有化等のメニューは、上述の合理化ニーズと交わり得るものであると考える。デベロッパーに必要なことは、企業ニーズに即した付加価値サービスを優先的に提示していくことであろう。


※記事は執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。
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