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リサーチ・フォーカス No.2019-013

【<<人生100年時代の高齢者の身元保証を考える No.1>>】
超高齢社会に相応しい身元保証システムの構築を~「ヒト」に依存した身元保証は早晩行き詰まる恐れ~

2019年08月06日 星貴子


わが国では、賃貸住宅への入居、手術・入院、就職など様々な生活の局面において、身元引受人や保証人が求められ、家族がそれを担うことが一般的となっている。しかしながら、少子化や家族関係の希薄化が進展するなか、子や兄弟姉妹、親戚を頼ることのできない高齢者が増加しており、身元保証人を確保できないことで、不利益を被る事態が相次いでいる。現行の身元保証システムは、社会情勢の変化に対応できているとは言い難いのが実情である。
そこで、「人生100 年時代の高齢者の身元保証を考える」と題して、複数回に分けて、超高齢社会に相応しい新たな仕組みを考察する。シリーズ第1 回の本稿は、総論として、高齢者を取り巻く社会環境の変化を取りまとめたうえで、現行の身元保証システムの問題を明らかにする。それを踏まえて、第2 回以降において、身元保証人に求められている役割ごとに、今後求められる新たな仕組みについて具体的に考察する。

頼ることができる身寄りのない高齢者が増加
わが国では、少子化や晩婚・非婚化、および核家族化を背景に、単身や夫婦のみといった高齢者だけで構成される世帯(高齢者世帯)が増加。2015 年現在の高齢者世帯は1,201 万世帯と、すでにわが国の5 世帯に1 世帯を占める。加えて、家族関係の希薄化と相まって、たとえ子どもがいてもいざという時に頼れない、あるいは頼らない世帯も増加。こうした高齢者世帯は、数百万規模に達している可能性。

2040 年には高齢者世帯の半数で身元保証人を確保できない恐れも
今後についても、身内から身元保証人を確保できない世帯は増加する見込み。高齢者世帯は、2025 年に1,427 万世帯、2040 年にはわが国全体の3 割に当たる1,583 万世帯に増加。このうち、子のない世帯は2040 年には高齢者世帯全体の3 分の1 に当たる516 万世帯に。加えて、保証する側の経済的・精神的負担への配慮から、あえて身内に身元保証人を依頼しない高齢者も増加することが見込まれ、2040 年には、高齢者世帯の過半数で、身内による身元保証人の確保が困難になる恐れも。

身元保証人の有無が高齢者の生活を制約
頼ることができる身寄りのない高齢者が増加することで、入院・手術、介護保険施設への入所や賃貸住宅への入居などの際に不利益を被る高齢者が相次ぐことになる。未収の入院費や滞納家賃および施設損壊などの損害賠償の連帯保証人、安否確認や緊急連絡先を担う保証人が確保できないことが理由。身内が保証人を務めることで日常生活の安心・安全を支える手段の一つであった身元保証システムが、社会情勢や家族環境が変化するなか、むしろ高齢者の生活や活動にとって制約要因の一つに。

急がれる超高齢社会に相応しい身元保証システムへの改変
主に身内が債務保証から死後対応まで包括的に保証する現行の身元保証システムは、現代および将来予見されるわが国の状況に相応しいものとはいえない。「人生100 年時代」と称し、高齢者の活躍や豊かな老後生活が目指されるなか、身元保証人が確保できなくても不利益を被らず、高齢者が安心して自立した生活を送ることができるシステムへの改変は待ったなし。身元保証人に求められる個々の役割で、「ヒト」に代わる仕組みを構築すべき。
債務保証については、保険や信用保証を強化・拡充することで代替可能なケースがある。医療判断については、健康保険証への重大医療行為の是非に関する本人の意思の登録を義務付けることや、医師・弁護士等からなる第三者機関の創設が考えられる。扶養については、地域包括ケアシステムの整備やICT 等先端技術の利用により対応できるケースが少なくないとみられる。死後対応については、マイナンバーを利用することで死後事務手続きの簡素化や相続手続きの円滑化が図ることができ、身元保証人がいなくても速やかな対応が可能になろう。

なお、上述の仕組みを構築、普及するには、民法、刑法、医師法、マイナンバー制度などの関連法制度や、所管する組織体制について検討する必要がある。これらについては、シリーズ第2 回以降で詳述の予定。

<<人生100年時代の高齢者の身元保証を考える>>超高齢社会に相応しい身元保証システムの構築を~「ヒト」に依存した身元保証は早晩行き詰まる恐れ~(PDF:909.12KB)
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