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「官民人材循環」戦略が地域経営を持続可能に

2019年02月01日 山田敦弘


拡大する地方自治体業務の運営には民間人材が不可欠
 地方自治体の業務範囲が拡大している。従来は、税、住民基本台帳管理、福祉、文書管理、生活環境、上下水道等など業務内容は明確で、変化はほとんどなかった。しかし、最近ではAI、自動運転、ビッグデータ解析などの新技術やインターネット、道路、鉄道といったインフラを積極的に活用する動きが出始めている。また、民間企業や第三セクター、NPOなど地域団体と協働する事業も増加している。人口が減少し、一方で住民ニーズの多様化が続くなかでは、これらを生かし、時代に即した地域経営をしなければ、地域を維持できなくなってきているからである。
 しかし、新しい技術や専門分野を理解した人材や官民連携をコーディネートできる人材を地方公務員から見つけることは難しい。既に海外では、要となるエキスパート人材を外部から積極的に取り込む先進事例も存在する。例えば米国のニューヨーク州政府では、州政府が直接雇用することが難しい優秀な外国人材を雇用するための会社を立ち上げ、その会社から州政府へ派遣をする仕組みを構築している。
 日本でも、内閣府が国家公務員や大学研究者、民間人材を地方自治体に派遣する「地方創生人材支援制度」が2015年に開始された。これまで、地方創生総合戦略をはじめ、情報発信(シティプロモーション)、データ利活用、産業創出・振興、地域ブランド、地域商社設立、観光戦略、駅前開発、企業・大学連携、農福連携などに携わる多様な民間人材が派遣されており、民間のノウハウが持ち込まれた地方自治体で多くの成果を上げている。

民間人材の地方自治体登用での課題
 しかし、このような人材活用は、あまり進んでいない。その大きな理由として挙げられるのが、地方自治体のマインドの改革と社会システムの構築の遅れである。
 まず、民間人材を受け入れる以前に、地方自治体が自身の課題や、解決に必要な人材を把握していないケースが少なくない。いくら素晴らしい人材に出会えたとしても、受け入れ側の課題認識が適切でなければ、実力を発揮してもらう機会が作れない。
 また、受け入れた後に、地域出身者や職員と同じように人間関係を築くことが非常に重要であるが、それに失敗したという話も残念ながらよく聞く。筆者は地方創生人材支援制度を介して大分県杵築市に派遣され、4年経過する現在もシティマネジャー(参与)として充実した日々を過ごすことができているが、それも首長をはじめ職員の方々から地域の事情について丁寧に説明を受け、仲間として扱ってもらえたからである。
 また、受け入れ側のマインドの改革だけでなく、サポートする社会システムの構築や、官民の働く側と受け入れ側の間に介在して相互理解を高めるモデレータを置くことも重要となる。そうしたサポートによって、人材マッチングをはじめ、事前の課題整理や解決方針の検討、受け入れ後の相談対応、技術動向や事例といった専門情報のバックアップなどを行うことが、民間人材の能力を最大限に引き出すために欠かせない。
 送り出す企業側には、キャリアの断絶のない人材循環の社内制度の整備を求めたい。多くの大手企業ではキャリアアップの過程として地方勤務が含まれているが、その一つに位置づけることなどが考えられる。もちろん、それをサポートする社会保障の費用負担方法や確定申告など事務の簡易化といった国の制度が整備されることは大前提である。

地方自治体職員を民間企業へ出向させる人材戦略
 地方自治体からの出向についても改革が必要である。市町村職員の出向先は、ほとんどが都道府県庁や中央官庁そしてその関連機関などである。しかし、求められる役割が変化し続けるなかで「持続可能な地域経営」を実現するには、外部、つまり民間の専門性や官民連携でのコーディネート力を習得する必要があり、今後は民間企業への出向を増加させることが重要と考えられる。
 なお、日本総研でも、地方自治体の職員を研修生として受け入れている。コンサルティングの現場から得た専門性や、民間企業との間に構築されたネットワークは、将来、彼らが地域経営を力強く先導する際に大いに役立つはずである。
今後、地方との官民の人材循環がさらに活発化し、持続可能な地域経営が進化することを期待している。

※記事は執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。
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