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SDGsウォッシュからの脱却 ‐ロゴでは社会は変わらない‐

2019年07月23日 橋爪麻紀子


 企業経営におけるSDGs(持続可能な開発目標)の取り組みが徐々に進んできた。
 グローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパンらが2019年2月に公表した調査結果によれば、SDGsに対する経営層の認知度は、この1年間で36%から59%まで上昇したという。同調査の回答に大企業が多いことを鑑みれば、主な要因には2017年11月の経団連の企業行動憲章の改訂が大きく影響していると考えられる。
 企業の株主・投資家向け説明会や、新卒採用者向けの説明会の場でも「SDGsについてはどのような取り組みをしているか」といった質問があったというから、SDGsが企業とステークホルダーとのコミュニケーションにおいて共通言語になりつつあることが分かる。既に数年前から取り組みを進めてきた企業では、自社の事業とSDGsの各目標との紐付け作業を終え、どのように事業を通じてSDGsに貢献できるかを整理している。そうした取り組みが最も分かりやすく現れるのが、統合報告書やCSR報告書だろう。

 一方、SDGsというカラフルなロゴが広く知られるようになるにつれ、「SDGsウォッシュ」という言葉が聞かれるようになった。これは、うわべだけ環境保護に取り組んでいるようにみせることを「グリーンウォッシュ」と呼ばれるのと同じように、うわべだけSDGsに取り組んでいるようにみせることを指している。

 英国CSR分野の大手、エシカルコーポレーションの調査(2018年)によれば、SDGsへの貢献を謳っている企業のうち56%が、実際に自社の活動がどの程度SDGsの達成に寄与したかを計測していないと考えている、という。これを裏付けるデータとして、KPMGの調査(2018年)によれは、グローバル企業250社のうち、SDGsの達成に「SMART(*)」な目標設定をしている企業はわずか10%であったという。

 (*SMART: Specific 明確な、Measurable 測定可能な、Achievable 実現可能な、Relevant (自社)価値観に沿った、Time-bound 時間軸のある)

 国連グローバル・コンパクト(UNGC)とグローバル・レポーティング・イニシアチブ(GRI)が共同開発した「SDGsを企業報告に統合するための実践ガイド」(Integrating the SDGs Into Corporate Reporting: A Practical Guide)は、企業向けにSDGsに関する情報開示を支援するために作成されたガイドラインだが、その中の記述を紹介したい。

    “「チェリーピッキング(良い所どり)」と「SDGsウォッシュ」を排除する。「チェリーピッキング」
   とは、最も優先順位の高いものではなく、企業にとって最も簡単なものに基づいてSDGsのゴールとター
   ゲットを選択することである。「SDGsウォッシュ」とは、グローバル目標であるSDGsへの積極的な貢献
   のみを報告し、重要な悪影響を無視することを意味する。”

 事業を通じたSDGs達成への貢献について、取り組みが進んでいる企業グルーブでは大半で、「過去から現在」までの自社の取り組みを17の各目標と紐付ける作業は完了させている。ただ、それを批判するつもりはないが、紐付けはあくまでスタートラインに過ぎない。ロゴを貼るだけで終わってしまえば、当たり前だが、社会や地球の状況はこれまでと何も変わらないか、悪化の一路をたどる。SDGsが求めているのは過去からの変革なのである(2015年9月に国連で採択された成果文書のタイトルは「我々の世界を変革する:持続可能な開発のための2030アジェンダ」)。「現在から未来」のための自社の取り組みを新たに考えるため、SDGsを起点とした「SMART」な取り組みを進めていくことが企業経営にSDGsを組み込むということなのではないだろうか。


※記事は執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。
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