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妊娠・出産という視点から見た女性の食生活の課題

2019年06月25日 小島明子


 『健やか親子21』(第2次)推進検討会報告書」(厚生労働省)によれば、若い女性を中心に、食事の偏りや低体重(やせ)の者の割合が増加するなど健康上の問題が改善されていないことが懸念されています。本稿では、厚生労働省平成30年度 子ども・子育て支援推進調査研究事業「妊娠・出産に当たっての適切な栄養・食生活に関する調査(株式会社日本総合研究所)」(以下、「調査」という)で得られた調査結果を元に、妊娠・出産という視点から見た女性の食生活の課題を述べます。

 調査では、全国の妊娠経験のない女性2,000人を対象に食生活に関する実態調査を行いました。その結果、妊娠経験のない20代、30代の女性の約8割が現在の食生活を向上させたいと考えながらも、実践できている女性の割合は30%未満であることが明らかになりました。

 食生活の実態を詳細に見てみると、2つの主な特徴が挙げられます。
 1つ目は、三食の摂取と十分な栄養という観点から、食生活が十分に整えられていないことです。三食の摂取という点では、妊娠経験のない女性が、朝食を取らない比率は15%以上に上り、朝食を欠食する女性が一定割合存在しています。また、栄養という点では、健康な身体づくりに重要な項目のなかで、野菜やカルシウムの摂取が不足し、食塩と脂肪の摂取が過剰になっていると認識している女性が約7~8割に上ります。
 2つ目は、正しい知識と技術の不足です。妊娠経験のない20代、30代の食生活に関する知識、行動については、「食品を選ぶのに困らない知識がある」、「食事を整えるのに困らない知識がある」、「食事を整えるのに困らない技術がある」の設問に対して、「はい」と答えている女性の割合は各々40%未満に過ぎません。一方、「運動量」を増やさず「食事量を減らす」ことでダイエットをしている女性が25%以上に上っています。
 
 「平成29年度健康寿命延伸産業創出推進事業(健康経営普及推進・環境整備等事業)調査報告書」(経済産業省)によれば、調査対象(一般モニター)の企業で、女性特有の健康支援の取り組みとして、最も多いのが「検診や受診のための有給休暇制度」(69.4%)で、「子宮頸がん、子宮体がん、乳がんなどの検診受診の促進」(65.3%)、「がん復帰後のサポート(業務上の配慮や精神上のサポートなど)」(60.3%)と続きます。企業が行う女性特有の健康支援の多くが、病気の発見や予後に関する支援が中心になっています。

 調査では、妊娠経験のない女性のうち、将来、子どもを持ちたいと考える女性は6割程度存在しているものの、30代後半になるに従って、その比率が徐々に低くなっていくことが分かりました。このことは、企業等が女性に対して妊娠・出産のための直接的な支援を行う際には、その内容や周知の方法等含め、多様な価値観への配慮が求められることを示唆しています。しかし、食生活に関していえば、女性が高齢になったときにはもちろんのこと、女性が(今は希望をしていなくても)将来子どもが欲しいと思ったときにも重要な要素になります。健康な身体であるためには、正しい行動を実践しておくに越したことはありません。女性本人が、自ら食生活の改善に目を向けるのはもちろんのこと、企業が女性従業員の食生活の改善という課題にも目を向け、支援を行っていくようなることを期待したいと思います。

*「働く女性のためのヘルスケアブック」のご案内
 日本総研では、平成30年度 子ども・子育て支援推進調査研究事業 「妊娠・出産に当たっての適切な栄養・食生活に関する調査」で、「働く女性のためのヘルスケアブック」を制作いたしました。以下のURLに掲載しましたので、ご自由にご活用いただければ幸いです。
https://www.jri.co.jp/MediaLibrary/file/column/opinion/pdf/190331_healthcare_2.pdf
 なお、製本された冊子をご覧になりたい方は、サンプル(2部/社)もご送付しております。ご希望の方は、下記連絡先までお申し越しください。
csr-enq@ml.jri.co.jp


※記事は執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。
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