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創造的活動を効果的に行うための構え

2019年01月29日 松岡靖晃


 日本総研の創発戦略センターでは、独自コンセプト・ビジョンの提示から事業化までを一貫して担っていくというスタイルのもと、容易に解決できない社会課題に取り組んでいくという理念を追求している。具体的には、コンソーシアムをはじめとする戦略的提携を通じた新事業開発、新産業創造を目指し、これまでに30以上のコンソーシアムを設立、延べ1,800社を超える国内外の企業と創造的活動を展開してきた。

 創造とは「人が異質な情報群を組み合わせ統合して問題を解決し、社会あるいは個人レベルで新しいことを生むこと(日本創造学会)」と定義される。これまでの創発戦略センターの取り組みは、様々な外部刺激を受け、数多くの情報収集をし、それらを統合することで新しいソリューションを考える活動だった。ただ近年では、情報が集まる場や情報を集めるツールが広く社会に普及した結果、情報収集のハードルは飛躍的に低下。むしろ、それら情報の組み合わせ方や、個人が内包する経験やノウハウとの組み合わせによる解釈に創造活動の重心が移ってきていることを強く感じている。こうした問題意識起点に、「潜在的に蓄積された経験やノウハウを表出させ外部情報と組み合わせることを、意識的に行う構えはどうあるべきか」という研究を、現在進めている。

 歴史を振り返れば、効果的に創造的活動を行うための秘訣を説くエピソードは洋の東西を問わず存在する。例えば中国の思想家は創造的な活動は机上での思考ではなく「三上(馬の上、枕の上、厠の上)」での思考が適していると説く。ギリシアでは純金の王冠を壊さずに不純物が混ざっていないかを調べることを命令されたアルキメデスが、困り果てた後、風呂の水が湯船からあふれる現象からアルキメデスの原理を発見したという故事が残っている。これらの取り組みは、課題に集中した状態を続けることよりも、集中を解いた緩和状態にて異質な情報の結合が新たな発見につながるということを主張している。論点整理、交渉、事務手続など集中を要する仕事が多い現代において、集中状態と緩和状態を意識的に使い分けられる能力こそが、効果的に創造的活動を行うために必須であり、新規事業開発を担うビジネスパーソンが今まさに身につけるべき思考の構えだと考えている。

 実際に思考を司るのは「脳」である。「集中」と「緩和」の脳状態を可視化ができれば、切り替えを鍛えるトレーニングプログラムも開発できるはずだ。現在、日本総研の研究員を対象に、集中と緩和を相互に誘発できるようにするワークに取り組み、その時の脳波を計測している。集中状態と緩和状態の違いを可視化し一部の分析ができる段階まで開発が進んでおり、将来的には意識的に緩和状態を創り込むためのワークを体系的に創り上げ、創造的活動を効果的に行うトレーニングに昇華させる予定だ。本トレーニングプログラムを完成させ、我々と同じ問題意識を有するビジネスパーソンにも提供し、すぐには解決できない社会の課題にWhat to designを投げかける創造的人材をひとりでも多く生み出すことに貢献したいと考えている。


※記事は執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。
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