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働き方の未来:サマータイム〜もう一つの選択肢

2018年10月12日 坂本謙太郎


 サマータイムの議論がにわかに盛り上がっている。2年後のオリンピック・イヤーがこの夏並みの猛暑になったら、という危機感に端を発したものだ。準備期間を考えれば2年後の実施は危なっかしい限りだが、ヨーロッパで暮らした経験を持つ人なら、サマータイムの良さを実感として味わっているのではなかろうか?長い夕暮れの下、BBQをしたり、散歩をしたりするのはなかなか気持ちが良いものである。

 にもかかわらず日本で反対の声が多いのはなぜか?「時間変更時に体内時計が乱れ、体調を崩す」「情報システム対応に5年はかかる」などの声が上がる。交通機関のダイヤ編成も容易ではなかろう。飛行機の国際線に至っては、冬ダイヤ、夏ダイヤの他に、それぞれ1日しか使わない冬から夏に移行するためダイヤ、夏から冬に移行するためのダイヤの四つが必要になる訳で、これはいかにも労力がかかる。事実、このような問題を受けて、本場欧州でもEU議会がサマータイム廃止の方向で動いている。

 わが国特有の事情としては、労働者と雇用者・顧客の間の信頼関係という問題がある。プレミアムフライデーを引き合いに出すまでもなく、「夕方の活動時間ができる」ということは、サービス産業(小売・飲食など)に従事する人がより長時間働かされるということにつながる。この国には消費者が平然とそれを要求してしまう空気があり、また、それを先回りして忖度する企業が少なくない。サマータイムを導入すれば、空が明るいうちに退社できるどころか、今までよりも1時間遅くまで働かされるという恐怖心を持つ労働者は少なくないだろう。人件費を埋没コストと錯覚し、営業時間の延長など人的サービスの強化によって差別化を続ける……このような風潮が変わらないまま、日本でサマータイムを導入するのは確かに怖い。

 ではどうすれば良いか?現実的な解決策を提案したい。サマータイムを導入するのではなく、日本の標準時刻を常に1時間早めるのだ。

 日本の標準時刻は東経135度線(明石市を通る)に合わせてあるが、これを150度線(千島列島を通る)に合わせるということ。そして、これを一年中変えない。これによって、明石市の南中時刻は一年中13時になる。

 最寄りの子午線ではなく、一つ東(15度東方)の子午線を標準時刻にするというのは世界では別に珍しいことではない。東経105度線が最寄りのシンガポール・マレーシアは中国の上海辺りを通る120度線、東経0度線が最寄りのスペイン・フランスはチェコのプラハを通る15度線に従って標準時刻を決めており、南中時刻は13時だ(ちなみにスペイン・フランスは夏時間も採用しているので、夏季には14時に南中時刻を迎える)。EUもサマータイムを廃止した後は、従来のサマータイムを通年で使う方向で検討している。

 1時間早めたまま一年中変えないということは、サマータイムの省エネ効果、午前中の涼しさ、遅い夕暮れを満喫しつつ、システムや時計の変更は1回だけ行えば良いということ。これなら、身の回りの時計の変更もさして手間にはならないだろう。情報システムに多少の変更が必要としても、年2回の変更を繰り返すことに比べれば、対応負荷は大幅に軽くて済む。交通機関も夏冬2種類のダイヤを作る必要はない。サービス業でも「夏季の営業時間」などという議論にはなりにくいだろう。

 もっとも、冬季は朝暗いうちに起きて出勤することになることになるので、少々寒い思いをすることになる。その分夕方の明るい時間も伸びるのだから、悪いことではなかろう。

 情報機器が発達し、飛行機をはじめ国際的につながるものが多々あるこの時代に、サマータイムを導入し、年2回時計を修正するというのは、間違いなく負担が大きい。それよりは、時計を1時間進め、その状態を通年で維持する方が現実的だろう。もしかするとオリンピックまでに対応することも可能かもしれない。サマータイムよりはよほど現実的な案として、世に問いたいと思う。


※記事は執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。
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