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未来洞察の3つの役割:アイデア出しに終わらせないために

2018年09月28日 


未来洞察の企業活用

 海外における未来洞察の活用事例としては、シナリオプランニングで有名なシェルや未来洞察の専門組織を初めて社内に構築した会社の一つとされるダイムラークライスラーなど、未来洞察を組織の継続活動として取り込んでいる企業を複数挙げることができる。一方、日本では大企業を中心としたプロジェクトベースによる活用が進んでいるものの、組織の継続活動への取り込みは道半ばにあるようである。本コラムでは、Rohrbeckらの未来洞察の企業活動における3つの役割を紹介し、国内企業における未来洞察の活用状況と今後の展開について述べる。

未来洞察の3つの役割

 Rohrbeckらによれば、未来洞察の企業経営における意義とはイノベーションを取り込む能力を最大化することにあり、その役割は以下の三つに分類されると述べられている(*1)

 ①戦略的役割:新たな事業領域を見いだす
 ②触媒的役割:イノベーションコンセプトやアイデアを多く生み出す
 ③対抗者的役割:イノベーションプロジェクトのアウトプットの品質を高める

 筆者が担当した製造業を中心とした未来洞察コンサルティングプロジェクトにこの分類を援用するとすれば、「xx年先を見越した将来事業領域の策定」は①に該当、「2035年に売上xx億円を達成する研究開発テーマの策定」は②に該当、「エマージングトレンドを用いた既存企業戦略の対応幅検証」が③に該当するといった具合であろう(*守秘義務のため、名称を改変している)。もちろんこれ以外にも、人材育成のツールとして未来洞察が使われることもあるがケースとしては稀である。むしろ②の副次的な期待効果ということが多い(人材育成ツールとしての未来洞察の活用については別コラム(「未来創造型人材育成ツールとしての未来洞察」)にて触れているのでご参照願いたい)。

触媒的役割への活用集中とその理由

 さて、筆者が支援してきたプロジェクト事例から三つの分類を俯瞰すると、経験的に研究開発組織から依頼される②に該当するプロジェクトが多いようである。未来洞察が技術予測分野から発展してきたことを鑑みれば、イノベーション機能の先端的役割を担う研究開発組織との相性は良く、当然の結果であろう。では、なぜ①と③の事例は少ないのであろうか。恐らくは各々に異なる性質の壁が存在しているのではないかと筆者は考えている。
 ①における壁は、マネジメントの未来洞察に対する受容性の壁である。事業ポートフォリオ管理は一般にマネジメントの業務範囲であるが、短期的な利益の追求や足元事業の課題対応に追われ、長期的活動への優先順位が低くなっているような場合、未来洞察の受容性は低くなる。誤解を恐れず一般化して言えば、マネジメントの視野は研究者が見ている視野ほどには遠い将来を見通してはいないと言える。
 ③は受容性以前の問題として、投入可能な資源の壁が存在していると思われる。③における活用は、担当者が抱える既存研究開発テーマにおける新たな着眼点導入や、担当者が立案した既存戦略の対応幅の検証等、より担当者レベルでの業務範囲になりがちなので、個人で未来洞察を活用するにはその投入できる資源が不足してしまう。組織的なバックアップなしに担当者が個別に未来洞察を行おうとすれば、情報収集の段階で力尽き、その後の解釈や組織内での導入・提案にまで至らないであろう。

未来洞察の組織的定着が今後の展開の鍵

 しかしながら、国内企業が上述の壁を乗り越え、①、③における活用を取り込むようになるのは時間の問題であると筆者は見ている。ではその展開の鍵となるのは何か?そこで必要になってくるのは、未来洞察の企業活動への組織的定着であろう。一過性のプロジェクトではなく、企業の組織学習を念頭においた組織と運用方法の導入を伴った未来洞察の取り込みである。例えば、未来年表のような情報プラットフォームを構築し、社内コミュニケーションを促すのは一つの方法だろう。社内連携を支援する仕掛けを作っておけば、担当者レベルでもプラットフォームに蓄積された情報を活用することで③のハードルを下げることができる。また、未来洞察の活用実績が積み重なってくれば、マネジメントの受容性が高まり①への活用への道も開かれるものと思われる。今後①、③への展開が進み、未来洞察が当たり前の文化として企業に定着していくことを願っている。

(*1):Rohrbeck, R. and H. G. Gemünden(2011) Corporate Foresight: Its Three Roles in Enhancing the Innovation Capacity of a Firm. Technological Forecasting and Social Change, 78(2), 231-243
以上



※記事は執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。
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